SNSの誹謗中傷といえば、2020年に亡くなった木村花さんを思い出す人も多いだろう。テレビ番組『テラスハウス』出演をきっかけに多くの誹謗中傷を受けた花さんは自死し、大問題となった。
マンガ『しょせん他人事(ひとごと)ですから』(白泉社)を監修する弁護士・清水陽平氏は、花さんの母・木村響子さんの代理人も務める。実際の訴訟、支払遅延の問題、本人死亡後の情報開示請求の複雑さについて聞いた。(全3回の2回目/1回目を読む)
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慰謝料の「分割」支払はあやしい
――マンガでは、人妻を誹謗中傷した相手が特定され、相手は和解金を支払うことになります。ところが、指定日に支払われたのは最初の2回で、あとは遅延してしまいます。
実際のケースでも、支払遅延は多いのでしょうか。
清水 これはケースバイケースで、その人次第……としか言えないですね。
和解金のうち、慰謝料として認められる相場は30万~60万円。調査費用を入れても最高で100万円前後、実際は60万~80万円ぐらいが多いです。金額を相手方に提示すると、「それくらいなら一括払いする」と言う人もいます。
――支払方法は、一括か分割か選べるんですか。
清水 依頼者次第ですが、応じる方も多いです。でも分割払いの場合、マンガのように最初だけ払って、あとは無視する人もいます。
ですから、相手方が「分割払いで」と言ってきたら、もしかするとあやしいかも……という印象はあります。
木村花さん死後の誹謗中傷、賠償金額は「129万円」だが……
――2020年5月、SNSで誹謗中傷を受け続けていたプロレスラーの木村花さんが亡くなりました。清水さんは花さんの母・響子さんの代理人でもありますね。
花さんの死後にTwitterで誹謗中傷をした男性を響子さんが訴え、昨年5月、男性側に129万円の賠償金支払が命じられました。その後1年以上経ちますが、これは支払われたのでしょうか。
清水 支払われていません。
――全くですか。
清水 はい。私は木村花さんの案件をいくつか担当していますが、この件については、現状で支払額は0円です。相手方は裁判で一度も出廷せず、答弁書も提出しなかったので、事実関係を認めたとされました。