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「依頼者も弁護士も不幸になる」SNSで“無理筋な情報開示請求”をしまくる有名人の目的とは《激変するネット中傷訴訟の10年》

『しょせん他人事ですから』監修弁護士インタビュー#3

2022/08/29
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 現在は「SNS依存」「SNS中毒」という言葉が当然のように使われている。だが、10年前の世界は、日々ここまでSNSに浸ってはいなかった。マンガ『しょせん他人事(ひとごと)ですから』(白泉社)を監修する弁護士・清水陽平氏は、約15年前からインターネットの誹謗中傷に関わっている。

 当時と今、ネットと人の関わりはどう移り変わったのか。(全3回の3回目/1回目を読む)

2010年頃までは「SNSはmixi、携帯はガラケー」

――清水さんがネットの誹謗中傷、炎上案件に関わり始めたのは、2008年頃からだそうですね。当時はどんな相談が多かったですか。

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清水 2008年頃は、SNSといえばmixiくらいでした。TwitterやFacebookはその年に日本上陸していますが、まだ流行ってはいなかったので。

 ですから、2ちゃんねる関連の相談が多かったです。「2ちゃんで中傷された」「個人名を晒された」などですね。

現在の「2ちゃんねる」トップページ

――2ちゃんねるはよく燃えてましたね。

清水 当時は《炎上》という言葉自体がなかったと思います。2ちゃんねるでは、炎上ではなく《祭り》と言っていました。

――あ。言われてみればそうでしたね。

清水 それに当時は、携帯といえばガラケー。iPhoneが出始めた頃で、スマホユーザーはごくわずかでした。世の中全体としては「ネットというものがあるよね」ぐらいで、使わない人はまったく使わないものだったと思います。

スマホがネット文化を変えた

――ネットの地位はとても低かったですね。2ちゃんねるは「便所の落書き」と言われてましたし。

清水 ええ。インターネットの情報は不確かで、まともなものはない……みたいな。それが変わったのは、2010年代に入って、スマホが普及したことが大きいです。

※画像はイメージです ©iStock.com

 それまでは、ちゃんとネットにつながるには、家やネットカフェのPCから……という時代でした。ところが、スマホの普及と同時にSNSも発達したので、誰もが常時、SNSを見られるようになったんです。

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