現在は「SNS依存」「SNS中毒」という言葉が当然のように使われている。だが、10年前の世界は、日々ここまでSNSに浸ってはいなかった。マンガ『しょせん他人事(ひとごと)ですから』(白泉社)を監修する弁護士・清水陽平氏は、約15年前からインターネットの誹謗中傷に関わっている。
当時と今、ネットと人の関わりはどう移り変わったのか。(全3回の3回目/1回目を読む)
2010年頃までは「SNSはmixi、携帯はガラケー」
――清水さんがネットの誹謗中傷、炎上案件に関わり始めたのは、2008年頃からだそうですね。当時はどんな相談が多かったですか。
清水 2008年頃は、SNSといえばmixiくらいでした。TwitterやFacebookはその年に日本上陸していますが、まだ流行ってはいなかったので。
ですから、2ちゃんねる関連の相談が多かったです。「2ちゃんで中傷された」「個人名を晒された」などですね。
――2ちゃんねるはよく燃えてましたね。
清水 当時は《炎上》という言葉自体がなかったと思います。2ちゃんねるでは、炎上ではなく《祭り》と言っていました。
――あ。言われてみればそうでしたね。
清水 それに当時は、携帯といえばガラケー。iPhoneが出始めた頃で、スマホユーザーはごくわずかでした。世の中全体としては「ネットというものがあるよね」ぐらいで、使わない人はまったく使わないものだったと思います。
スマホがネット文化を変えた
――ネットの地位はとても低かったですね。2ちゃんねるは「便所の落書き」と言われてましたし。
清水 ええ。インターネットの情報は不確かで、まともなものはない……みたいな。それが変わったのは、2010年代に入って、スマホが普及したことが大きいです。
それまでは、ちゃんとネットにつながるには、家やネットカフェのPCから……という時代でした。ところが、スマホの普及と同時にSNSも発達したので、誰もが常時、SNSを見られるようになったんです。