31年前、障がいを抱える子どもの働く場にと豆腐店を創業し、息子を育て上げた夫婦がいる。障がいと向き合い続けてきた夫婦が今、思うこととは…。
障がいに負けず…親子で力を合わせ身につけた技術
富山県小矢部市にある豆腐店「斉藤商店」は、2022年8月で創業して丸31年になった。豆腐店を創業した齊藤寛明さん(75)と、長男の勇旗(ゆうき)さん(45)。
(Q. 仕事は楽しいですか?)
長男・勇旗さん:
楽しいね
齊藤寛明さん:
勇旗は豆腐作りの方に4月から入って、放っておいても、いつのまにか自分のできるものを増やしている。多分、あと5年もしたら自分でできるようになるんじゃないか。5年したら僕も80歳ですから、それまでに何とかできるようにしたいなと思って
勇旗さんは重度の知的障がいを抱えているが、創業当時から工場で働き、父・寛明さんと力を合わせながら、少しずつ仕事を覚えていった。
絹ごし豆腐を茶わんに盛り付けることで水分が抜け、おいしくなる茶わん豆腐や焼き豆腐などを作る。
齊藤寛明さん:
完璧やね、今日は
油揚げ10枚をパックに詰める速さは、まさに職人技だ。勇旗さんの母・明美さんは。
齊藤明美さん:
変わっていないですよね
勇旗さんに障がいがあると分かったのは、2歳のとき。担当医からは「将来において、言語などの知的開発は難しい」と告げられたという。
齊藤明美さん:
普通の子どもは知能が発達していくのに、勇旗は自閉の特徴が著しく出てきて。(障がいを)認めざるを得ない感じでした
「息子が働ける工場を」障がい者雇用に注力
当時、東京で働いていた寛明さんは仕事を辞め、勇旗さんの小学校への入学を1年間猶予する手続きをし、親子二人三脚で自立訓練に明け暮れた。
齊藤寛明さん:
数の概念を教えるのに、6と書いたところには6枚のシールを貼っていた
数字を覚えたら足し算や引き算。文字を覚えたら、生活に必要な挨拶や曜日などを声に出して、覚えるまで何度も何度も繰り返した。