「“ちむどんどん”のアクセントからして、ぜんぜん違いますよ。なぜあんな発音をするんですか。あなたたちがNHKに電話して直させてください!」

 NHKの朝ドラ「ちむどんどん」の初回が放送された4月11日、沖縄ことばの普及を促す県庁内の「しまくとぅば普及センター」にこんな電話が掛かってきた。スタッフによれば、この女性はNHKに直接電話したが聞き入れられず、センターにかけてきたのだ。

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「ちむどんどん」の言葉を聞いて「ちむわさわさ」

 かくいう筆者もドラマの舞台となっているやんばる生まれで18歳までを過ごした。そもそもやんばるとは名護を中心とする沖縄北部を指し、昨年、「今度の朝ドラは、やんばるが舞台だ」と発表されると、やんばる各地が歓喜にわいた。

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 なのに、今は何だかモヤモヤ。電話の主と同様、「ちむどんどん」の登場人物が喋る言葉が朝から気になり「ちむわさわさ」して仕方ないのだ。あ、これは「心がざわざわして落ち着かない」という意味です。

 因みに「ちむどんどん」の読み方はフラットではなく、やんばるでは最終音節にアクセントが来る。「ちむどんどん」なのだ。

「やんばるの言葉が全国に流れると期待していたのに、まったくやんばるの香りがしない。これじゃあ、何のためにやんばるを選んだのか分からないよ」

 そう話すのは大宜味村で生まれ、現在は名護市で果樹園を営む伊原正尋さん(60)。やんばるのアクセントは那覇とも違い、主人公の暢子がよく言う「まーさん」(美味しい)も「サーターアンダギー」も、一番最後にアクセントが来る。

 矛先は、あの決め台詞にも及んだ。

「大体“まさかやー”なんて使ったことないもんね。あれは那覇とか中・南部の言葉だし、そもそも最近の若者言葉だから」(同前)

暢子も「まさかやー」(NHK朝ドラ「ちむどんどん」より)