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 29歳で、息子ぐらいの年齢なんですよ。「そんな若い人がなんで母親みたいな年齢の女性を叩くんだろう?」と思って管轄の刑事さんに聞いたら、仕事や家族のことでいろいろ挫折や苦労があって、誰にも認めてもらったことがなかったと。

 でも、その掲示板で過激なことを書いたら「よく言った!」と認められて、嬉しくなって、悪いことだとも思わなくなったって。先日、中傷の言葉を書き込んだその男性が取材を受けていて「誰でもよかった」って言っていましたけどね。 

 なんとも胸が痛くなるというか。もちろん、その彼に責任はあります。でも、そそのかす人たち、焚きつける人たちもいて、そういった構図も含めて問題だと思うんです。 

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早期発見できなかった悔しさもあるけれど

ーー今後も誹謗中傷には毅然とした対応を取っていかれる? 

 変えていかないといけないですから。判例や事例といったものが積み重なることで、物事って変わっていくので、誰かがなにかをしないと。「誰かがやらないといけないんだったら、私がやろうじゃない」というだけのことで。

 別にネットが悪いなんて思っていませんけど、このまま放っておいたら無法地帯になってしまうし、それが犯罪にもつながるし、命に関わる問題も出てきてますよね。罪に問われる行為があるんだっていうのを、誰かが示していかないと。私は司法とか難しいことはまったくわからないですけど、なにかしらのきっかけがないといけないなとは思ってます。 

 それと、これからもがんの早期発見を訴えていきたいんですよ。自分がそれをできなかった悔しさもあるし。この悔しさをどうすればいいのかと考えたら、私のような人を作らないことだって。 

 口腔がん、舌がんは、希少がんだから認知度が低い。私が気づけなかったのも、口の中や舌にがんができるなんて頭に浮かばなかったから。早期発見できれば、本当に初期治療だけで済む。がんとはそういうものだと先生から聞いて、「なるほどな。じゃあ、早期発見の大切さをみんなに伝えていけばいいんだ」と入院中に思ったんです。 

 自分としては、がんを転換期だと思っていて。自分の仕事の受け方、受ける仕事の内容を、これまでとは違うものにしていこうと、気持ちも切り替えるというか、乗り越えようとしているんですよね。 

 

写真=杉山拓也/文藝春秋

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。