昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

堂林翔太の初球ホームランで目が覚めた。「頼もしいカープ」が甦った夢のような時間

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/08/24

 今シーズン。開幕直後こそ順調な滑り出しを見せ「最下位予想してたのはどこのどいつだ! ザマぁみろ!」と息巻いていた僕らのカープですが、徐々に徐々に失速。そうこうしている内に迎えた交流戦では相変わらずの「鬼門っぷり」を発揮し、5勝13敗で交流戦最下位。対照的に14勝4敗と大きく勝ち越したヤクルトは交流戦を首位で終え、リーグ戦に戻るとヤクルトが圧倒的な独走態勢に。もはやツバメの尻尾すら見えない、どこを飛んでいるかも分からないというような状況になっていました。

 このあたりからでしょうか。いや、間違いなくこのあたり、というか、ズバリ交流戦です。ここで私は「ああ、今年もダメか」。もちろんちゃんと応援はしているのですが、気づくと開幕直後の熱量とは明らかに違う自分が形成されていました。負けても「やっぱりな」。負けを悔しがる気持ちが薄れ、気づけば佐々岡監督への不満をもらし、投手陣への不満をもらし、やたらと後ろ向きな気持ちで試合を観るようになっていたのです。

 とは言ったものの、最下位に沈み、そこからまったく浮上できないほどチーム状況は悪くありません。2位になったり3位になったり、4位になったり5位になったり、連勝と連敗が多いため振り幅は大きいのですが、現段階でもAクラスを充分に狙える位置にいます。ただ、やはり気持ちが上がってこない。シーズン前半であれば「今日は勝つぞ」だったのが「今日は勝てるかな」あるいは「負けちゃうかもしれないな」。負けても大きく傷つかないよう、自分の心に保険をかけ、試合前から少し弱気になってしまう日々が続いていました。

全力モードへと切り替えてくれた堂林の一発

 そうこうしている内に、カープが後半戦最大の危機を迎えます。8月16日、午後3時過ぎ。突如「広島に激震! 佐々岡監督、菊池涼、小園、薮田ら8人が‪コロナ感染。スタッフ含め11人が集団感染」という衝撃的なニュースが飛び込んできたのです。もちろん、それまでにも‪コロナ感染による選手の離脱、下半身のコンディショニング不良による西川の離脱などはありました。ありましたが、ようやく、ようやくそれらを乗り越え、待望のフルメンバーが揃ってきたタイミングでの集団感染。SNSでそのニュースを目にした途端、私はスマホから目線を外し、自宅の天井を見ながらひとり言のように「終わった」。そうつぶやいていました。これを読んでいただいている皆さんも同様に、大きな大きなショックを受けたと思います。‬‬‬‬

 そこから数時間後、まだ心の整理がついていないのに、その日の試合が始まってしまいました。監督代行は河田ヘッドコーチ。ああ、そうか。ぼんやりとした感覚でそれを受け入れる。受けた衝撃が大きい分、心がフワフワし、地に足がついていないような状態。そうこうしている内に試合が始まり、先発の森下は先頭打者にヒットを許すも、後続を抑え打者4人で1回の表が終了する。ここでもまだ気持ちは浮ついたまま。そして迎えた1回裏、カープの攻撃。チームが緊急事態に陥った中、1番バッターとして起用された堂林が初球を美しいスイングで振り抜く。思わず「えっ」と声が出る。打球が左中間スタンドに飛び込む。今度は「うわっ」と声が出る。ここで私は目が覚めました。堂林を温かく、そして元気に迎え入れるカープベンチ。その光景を見て「おおっ。おおおおおおっ!」。気づけば自宅の部屋で飛び跳ねていました。

先頭打者本塁打を放った堂林翔太

 そうだ。こっちが動揺していようが浮ついていようが、もう選手は戦っているんだ。逃げずに立ち向かっているんだ。こっちもちゃんと応援しなきゃダメじゃないか。何年カープファンをやってるんだ、まったく。堂林の初球ホームランは自分の浮ついた気持ちを吹き飛ばしただけではなく、前を向き、上を向いて応援する全力モードへと切り替えてくれたのです。

z