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宮﨑敏郎の変態打ちに僕の中の「こまだ」が疼いた

  その衝撃から28年間一喜三憂しながらベイスターズの応援を楽しんできたわけだが、個人的には芸人という職業を志した。芸人になってまずプロフィールに書いたのがベイスターズファンということだった。そして念願叶い初めてベイスターズの応援をするというネット番組の仕事を貰った。

 2016年4月30日阪神戦。初めて仕事として観た試合はやはりとても心に残っている。7回まで1-0の投手戦。応援番組としては盛り上がる展開ではなかったので野球芸人としての難しさも感じながら応援していたその時、代打で出てきてしれっとホームランを打ったのが宮﨑敏郎という選手だった。自分と同じ年齢のドラ6で入った男だ。ピッチャー榎田の内角の厳しいコースのスライダーをお馴染みの変態打ちで甲子園のポールに当てる、ホームランにしたのだ。豆タンクのような風貌で、変な構え、足も遅そう……僕の中の「こまだ」が疼いた。

 この選手がベイスターズを引っ張ってくれるんだ。当時そう考える人は少なかったと思うし、子供達には宮﨑敏郎の良さは理解し難かったと思う。でも僕には確信があった。こういう選手が生きるチームなんだベイスターズは……と。あれから宮﨑選手も苦労しながらセ・リーグを代表するバッターになっていって、もはやベイスターズの顔だ。僕は日々芸人として不器用にコントに向き合い続けてる。そんな僕にとって、決してポップではない選手が遅咲きで活躍しているその姿……宮﨑敏郎は、最高にカッコイイ存在だ。大人向けの選手故にもっと評価されていいのにという節もあるが、この感じが僕にとって素晴らしく「こまだ」なんだ。

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 長年応援してきた僕から見ても現在のベイスターズは強いと思う。別に解説者が「調子いいですね」とか「戦力が整ってきてますね」とか教えてくれなくても、調子に乗ってイケイケの雰囲気になった時のベイスターズは強いとファンの誰もが知っている。そしてその勢いだけではなく、もしかしたらみんなが大好きな98年のチームよりいい選手が揃ってるんじゃないかと感じさせてくれるのが今のチームだ。何より今年逆転優勝したら劇的過ぎて、98年と並ぶ伝説になるだろう。

 そしてここに来て宮﨑がギアをひとつあげて打ち始めた。個性豊かなチームを一番しぶい個性のある男が引っ張る。なんて魅力的なんだろう。オレ達の横浜は個性があってイケイケなチームなんだ! だから好きなんだと強く感じる。ファンとして今後も優勝に向かって走る強い魅力的なベイスターズを盛り上げていきたいし、ベイスターズ芸人と名乗っても恥ずかしくないように本業のネタも頑張りたいと思う。こう思わせてくれたベイスターズはもう弱いチームじゃない……そんなことを考えながらカフェの机の下で宮﨑の左足をしている。

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