東京の新橋や神田、五反田と言えば中小企業の集まる街として有名だ。JR新橋駅前のSL広場は、毎晩酔っ払い状態のおじさんサラリーマンたちをメディアが取材する格好のスポットとして名高い。
中小企業庁による「中小企業白書・小規模企業白書」によれば、日本の企業の99.7%が中小企業で占められている。中小企業で働く、あるいは小規模事業者として働く人の数はおよそ3000万人に及んでいる。その多くは自社のオフィスや工場に勤めていて、東京都心でいえば、新橋や神田、五反田といったエリアは中小企業の、おもに事務系サラリーマンが勤める事業所の受け皿になっている。
中型・小型ビルが多い新橋エリア
オフィスビルマーケットでは、ビルの大きさによってカテゴリーが異なる。様々なカテゴリー分けがあるが、一般的には賃貸する1フロア(基準階と呼ぶ)の面積に応じて分類している。賃貸する1フロア面積が200坪以上のビルを大規模ビル、100坪から200坪を大型ビル、50坪から100坪を中型ビル、20坪から50坪を小型ビルと呼んでいる。新橋などのエリアに集中しているのが、このカテゴリーのうちの、中型や小型のビルだ。
これらの中小ビルの多くは、大手デベロッパーなどが所有、運営するものは少なく、多くが地場の中小企業や個人が所有するものだ。彼らの多くは戦前から戦後まもなくにかけて、この地で商売などを営んでいた事業者だ。高度経済成長期から平成バブル期までに、彼らの多くが、増え続けるオフィスニーズを見越して、自らの事業とは別に土地の有効活用策として、オフィスビルを建設し、これを賃貸することによって副収入を得る道を選択したのが、新橋や神田、五反田などに多数存在する中小ビル群である。
築40年~50年が経過したビル
現在、ビルの多くは築40年から50年が経過している。マンションと同じく、老朽化が進んだ建物は、大規模修繕だけでなく建物自体の建替えを視野に入れなければならない時期に差し掛かっているのだが、彼らの未来は明るくない。持続可能性がない。建替えられないのだ。
都心の良い立地のビルなのに、持続可能性がない、というのを不審に思うかもしれないが、これが世の中の現実だ。私の会社では、数年前に新橋の中小ビルオーナー約20社に直接面談をしたことがあるが、彼らの苦悩は私たちの想像をはるかに超えるものだった。