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中野と小岩の見分けがつかない…市街地再開発で‟チェーン店のような街”が増えるワケ

2021/06/01
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 最近街を歩くと、JRや私鉄の駅前で昔は商店街だったところに囲いがされ、再開発を告知する看板が掲示されている姿をよく見かけるのではないだろうか。看板の中身はといえば、事業者の欄に「〇〇町××丁目第一種市街地再開発組合」といった名称があるはずだ。

 これは平成バブル時代に流行ったような不動産業者による地上げではない。たとえば、駅前商店街などで、地権者が共同して再開発を行う形態のもので、法定再開発の一つの手法である。

©️iStock.com

事業費の負担なく再開発の恩恵を受けられる「市街地再開発事業」

 市街地再開発事業とは都市再開発法に定められた開発形態で、老朽化した木造建築物や細分化された権利関係を整理し、土地の高度利用と都市機能の更新を目指す事業に対して、事業費の一定割合を補助することを目的にしたものだ。

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 具体的には、土地の高度利用によって生まれる新たな床(保留床)を新たな居住者や事業者に売却することによって事業費を賄い、権利者は自身の持つ従前資産の評価にみあった分の床(権利床)を獲得することで、基本的に事業費の負担なく再開発の恩恵を受けられる第一種事業(権利変換方式)と、施行地区内の土地建物をいったん施行者が買い取って、従前の権利者が希望すれば相当分の床を与える第二種事業に分かれる。

 以前は地方公共団体や都市再生機構などによる第二種事業も盛んに行われたが、最近の主流は第一種事業、つまり地権者たちが中心になって再開発を行うものだ。

 全国でどのくらい行われているかと言えば、国土交通省の調べでは、事業が開始された1969年から2017年までの49年間で1077地区が実施され、うち919区が完了、この時点で100以上の地区で計画されていることになる。

単体では売却しづらい駅前商店街の店舗

 鉄道駅の駅前地区などで市街地再開発が盛んになっている背景には、駅前商店街の多くが衰退していることにある。郊外を中心に大型商業施設が展開し、顧客を奪われているだけでなく、昭和から平成にかけて店を守ってきた店主たちの高齢化が進み、事業承継もままならなくなっているのだ。

 だが駅前商店街にある店舗の多くは、土地面積も数坪からせいぜい30坪程度と小さく、単体で売却しようにも買い手は少ない。平成バブル時代であれば、札束もった地上げ屋がやってきて、目を見張るような値段で買ってくれたが、今ではこうした形態の土地売買はあまり見かけなくなった。