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中野と小岩の見分けがつかない…市街地再開発で‟チェーン店のような街”が増えるワケ

2021/06/01
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タワマンを購入する人たちの顔ぶれ

 こうして販売されるマンションは誰が買うのであろうか。都内であれば、おそらくそれまではエリアにあまり関係のなかった人たちだ。なんといっても駅前。そして勤務先の大手町や新宿まで近い。夫婦共働きのパワーカップルがダブルローンを組んで買う。その街の歴史や伝統にあまり興味はなく、商店街で買い物はしなくても、とりあえず会社に近くて、子供を預ける保育所があればオッケーというわけだ。

 地方では、まずはその土地の富裕層が見栄で買う。駅前の超高層マンション。天下を取ったような気分で周囲に自慢できる。次に郊外に住んでいた住民が高齢となり、何かと便利な市の中心部に集まってくる。コンパクト化という現象だ。そして東京などの大都市に住む投資家たち。彼らはあまりに高くなってしまった東京の不動産に食傷気味。彼らの目には地方駅前のタワマンがずいぶんお安いものに映る。賃料も土地代ほど東京と地方の差はない。つまり利回りは高い。価格が安いだけではない。土地代が安いので価格のほとんどが建物代。建物は償却対象となるので投資には有利だ。金利が低い今がチャンスだ。

伝統や文化は関係ない、チェーン店のような街へ

 こうしたいろいろな人たちの思惑が集まってマーケットは生まれる。だからこれらの開発に、その街が大切に育んできた伝統や文化の香り、歴史、未来への思いなどはあまり関係がない。ましてや地元の人たちとの交流など、多くの人たちは関心が薄いのだ。そもそも地元の人たちが買えるようなお値段のマンションはこうした再開発ではほとんど存在しないのが実態だ。

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©️iStock.com

 どこの街でも同じような顔が形成されるのは、日本全国どこの道を走っても沿道に並ぶのがチェーンを主体とした同じような顔の飲食店であることと似ている。地方のどの大型商業施設に足を運んでも東京資本の同じ看板の物販店ばかりというのが、現代の開発の特徴だ。

 なんでも同じように考え行動する日本人の特性がいかんなく発揮される市街地再開発事業。将来は本当に大丈夫なのだろうか。30年後、同じような姿カタチをした、なんの変哲もないマンションにどんな価値がついているのだろうか。その姿は日本という国の行く末が、最近一向に見えてこないのと重なりあってしまうのだ。

中野と小岩の見分けがつかない…市街地再開発で‟チェーン店のような街”が増えるワケ

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