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「魅力的な故郷である日本」とトトロ
近代化の破産と混乱の時代でもなく、資本主義があらゆるものを食い尽くそうとしていく時代(テレビはその象徴だ)でもなく、その間にあった「小春日和」の時期。
好きになるのが難しい「日本」という国であったとしても、その瞬間の田舎の風景であれば「魅力的な故郷(カントリー)である日本」として再発見し得る。その「ありうべき故郷」を再発見するプロセスこそが『となりのトトロ』という作品だったのではないか。トトロの存在感は、その「ありうべき故郷」が実在すると信じてもらうために不可欠なものだったのだ。
つまり『となりのトトロ』は、ある時期の日本が愛することのできる故郷(カントリー)であったというひとつの“神話”を成立させようとした作品であり、トトロはその神話を支える柱だからこそ、実在感が重要だったのだ。
「宮崎駿のもたらした最大の恩恵はトトロだと私は思う」
高畑勲はこう記している。
「宮崎駿のもたらした最大の恩恵はトトロだと私は思う。トトロは普通のアイドルキャラクターではない。彼は所沢だけでなく、全国の身近な森や林にくまなくトトロを住まわせたのだ。トトロは全国のこどもたちの心に住みつき、こどもたちは木々を見ればトトロがひそんでいることを感ずる。こんなに素晴らしいことはめったにない」(徳間書店『映画を作りながら考えたこと』所収「エロスの火花」)。
こうして日本人は『となりのトトロ』という“神話”を手に入れたのである。
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参考:『ジブリの教科書3 となりのトトロ』(文春ジブリ文庫)
作品静止画=©1988 Studio Ghibli
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