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最大のヒットは一岡竜司。これぞ人的補償の醍醐味

 巨人から人的補償で移籍した選手で、成績として成功の部類に入るのは通算224勝の大投手、工藤公康だ。門倉健の代わりに横浜に移籍し、年俸は2億円減の9000万円に下がりながらも07年に7勝を挙げた。巨人での2年間で1勝に終わった門倉を大きく上回り、古巣に意地を見せた。

工藤公康のベイスターズ入団会見 ©文藝春秋

 片岡治大の人的補償で西武入りした脇谷亮太も、巨人に異例のFA復帰を果たすまでの2年間、脇役として重宝された。

 そして最大のヒットは一岡竜司だろう。大竹寛の人的補償として14年に23歳で広島に移籍すると、中継ぎとしてフル回転。16年からのチームのリーグ3連覇に貢献した。巨人が地団駄を踏むような好成績で「これぞ人的補償の醍醐味でした。広島は一岡の加入が黄金期と重なり、その時期巨人は対照的に低迷したことも痛快でした」(遊軍記者)。

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一岡竜司 ©文藝春秋

 一方の大竹は巨人では一度も2桁勝利に届かず、途中で中継ぎに転向した。存在感を見せたシーズンはあったものの昨季限りで引退。

「巨人のFA戦略には他球団の戦力を引き抜いて弱体化を図る側面もあり、必ずしも自軍での活躍にこだわりません。ただ、大竹のケースは一岡の飛躍を考えると、巨人が失ったものは大きかった」(同)

今オフ国内FA権を取得する西武・森友哉の行方

 今オフに目を向けると、西武の強打の捕手、森友哉が国内FA権を取得し、行使すれば巨人が阪神などとともに獲得に乗り出すのではないかと取り沙汰されている。FA選手は前所属球団で年俸が1~3位(Aランク)、または4~10位(Bランク)なら人的補償が発生する。森は西武でAランクのもようで、人的補償は確実視されている。

森友哉 ©文藝春秋

 森を獲得した球団がプロテクトできる自軍選手は、相手が指名できない外国人と直近のドラフト指名選手を除き、28人だけだ。前出の元監督は「巨人には他球団ならレギュラーになりそうな選手がプロテクト名簿から外れる可能性がある。特に原監督の評価が低い小林(誠司)は森と同じポジションで、プロテクト外なら真っ先に候補となりそう」と言う。ただ、巨人からの人的補償選手は移籍先で低調な傾向にあるだけに「巨人は森獲得に成功しても、その点では憂いはないのではないでしょうか」とも分析するが、果たして――。