大阪桐蔭高校野球部の夏が終わった。8月18日の準々決勝、9回表に下関国際高校に逆転を許し、4対5で敗れ、春夏連覇はならなかった。ただ、”大阪桐蔭一強”は、ライバル校を強くさせた。その”成果”が、昨年夏の近畿勢による4強独占だった。
ライバル校たちは、大阪桐蔭をどう見ているのか。長きにわたり大阪桐蔭の取材を続けるスポーツライターの柳川悠二氏による昨年9月9日号の記事を再公開する(年齢・肩書き等は公開時のまま)。
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近畿勢躍進の理由の一つに、練習環境の差が挙げられる。近畿の学校は自校に戻って練習することが許されているが、地方の学校は満足な練習時間が得られず、順延による急なスケジュール変更で練習場所を確保するだけでも一苦労だった。
「それともうひとつ、近畿の高校野球のレベルが非常に高くなってきているのは間違いありませんね」
準々決勝で智弁学園に敗れた後、明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は語った。その中心的存在が大阪桐蔭だ。
大阪桐蔭には“特Aばかり”「一つも面白くない」
2012年以降、春夏通算六度の全国制覇。今年のチームはセンバツにも出場し、春季近畿大会も制した。80年代のPL学園のような黄金期を迎えている大阪桐蔭について、馬淵監督は以前、こうボヤいていた。
「ええ選手がおって勝つのは一つも面白くない。力の落ちる選手たちを、練習と作戦と根性でいかに勝たせるかが監督の仕事でしょう」
この夏ベンチ入りした18人の出身地は近畿以外に北海道や愛知、岐阜、山口など全国にわたる。ほとんどがU-15侍ジャパンなどの代表歴がある、高校野球関係者が「特A」と呼ぶ選手ばかり。一学年約20人という狭き門をくぐれば、関東・関西の強豪私大や社会人の名門チームへの道が開けているのが人気の理由だ。