小中学校や高校などで、全国的な教員不足が深刻化している。2017年の文科省の発表によると、中学校教諭のうち6割の時間外労働が「過労死ライン」である月80時間を超えており、この実態が広く知られたことにより、教員採用試験受験者が大幅に減少したと見られている。

 文科省が今年6月に発表した2020年度の教員免許状(普通)の授与数は、小学校が2万8187件(前年度比146件減)、中学が4万4297件(前年度比1712件減)、高校が5万2629件(前年度比2355件減)、特別支援学校1万2300件(前年度比1094件減)、幼稚園で4万4225件(前年度比1928件減)。

 病気や出産で休暇を取得した教員の代わりが見つからない等の事情によって、国語など一部の授業を自習にせざるを得ないケースもあり、問題は年々深刻化が進んでいる。

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「気になる子」がいても……

「なんやその目、どうしたんや」

 中学1年生のとき、家庭で殴られたために目の上の皮膚が切れて抉れ、右目の周りが痣になったまま登校したことがあった。廊下を前から歩いてきた学年主任の先生は絆創膏を貼った私の顔を見て「怪我でもしたんか」と笑いながら声を掛けてきたが、互いの顔がよく見える距離まで近付くとただの怪我ではないことに気が付いたのか、一瞬で顔色を変えた。

 母親から「殴られたことは誰にも言ったらあかん。自分の不注意でぶつけたって言うとき」と口止めをされていた私は先生の顔色を見て、とっさに「やばい、バレる」と思ってしまった。

「寝ぼけていて、思い切りタンスに顔をぶつけました」

 私が俯いてそう言ったあと、先生は数秒間沈黙したあとに「アホやなぁ。気を付けや~」とぎこちなく笑うと、足早にその場から去って行った。もしもあのとき、先生が私の家庭で起きていることについて尋ねてくれていれば、もっと早くに地獄から抜け出せていたかもしれない。決して先生を恨んでいるわけではないが、そう思ったことが何度もある。