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「内野をどこでも守れて、時に意外性のある打撃」の選手たち

 考えてみれば、昔からロッテではマルチロールのバイプレーヤーに心打たれることが多い。さらに言えば「内野をどこでも守れて、時に意外性のある打撃」というタイプが、妙に頭にこびりついている。三木以外に誰がいたかなあ?と考えて、思いついた選手と通算成績を書き出してみると……。

三木亮  515試合108安打5本塁打45打点 打率.216
塀内久雄 449試合111安打9本塁打40打点 打率.199
渡辺正人 492試合140安打11本塁打71打点 打率.207
五十嵐章人870試合422安打26本塁打171打点 打率.234
※三木は8月25日時点。五十嵐はオリックス・近鉄時代を含み、投手としても1試合登板

 五十嵐の成績が少し抜けてるものの、出場試合数を見ると三木・塀内・渡辺正ともにこんなに出てたとは。そして3人の成績がどことなく似てるし、ホームラン数も意外性を物語る。試合終盤、どこか内野のポジションに就いているイメージはあるが、一軍でこれだけの出場試合数を積み重ねられるプロ野球選手はそうそういないのだから、ホントみんながんばっている……。

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 さらに「メーンポジションってどこ?」と質問されたら「う、うーん、どこっていうより内野全部かも?」って感じなのがすごい。究極、守ろうとなれば外野だって守ってくれるし。パワプロで使うとき、三木や塀内の守備位置表示が「遊二三」「二遊三」「二遊一」「遊二一」「二一遊」「遊二外」とかその年によって微妙に変化してるのを確認するのも好きなんだよな……。

今、自分が生きるのはどんなポジションか

 塀内は2000年代から10年代前半にかけて、内野どこでも守ってた。キャリア全体としては相次ぐケガ、さらには「折れたバットが頭に直撃」「キャンプ中にはキャッチボール中、打球が飛んできて頭蓋骨骨折」など、なんてツイてないんだ……と思うことは多々あった。しかしツボにハマった時に飛ばす弾丸ライナーの打球は「やっぱり高校通算30本塁打のパワーって本物なんだ」とビックリした。

 同じような記憶があるのは、渡辺正人。守備力には盤石の信頼を置きつつ、“打撃さえ上がってくればレギュラーだよねえ……”とは常々思ってた。でも、東京ドームに観に行った2005年のアジアシリーズ決勝で、渡辺正が看板当たるんじゃないか級の超特大ホームランを見た時、「やっぱドラ1のプロ選手ってすげえ」と衝撃を受けた。あとマリンがとんでもない強風の日、絶対エース化してたダルビッシュからランニングホームラン打ったこともあったよな……。

 そんなプレーとともに“プロ野球選手として生き残るためにどうしなければいけないのか”というのを彼らを見るたびに考えさせられた。

 そしてキング・オブ・ユーティリティ、五十嵐の現役時代も衝撃的だった。何しろ守るポジションも打順もいつでも違う、って選手はいままでほぼ記憶にないんだから。さらに五十嵐は94~96年くらいまでレギュラーをつかみかけていたし。

 何より五十嵐と言えば、この2つの記録が燦然と輝く。

「通算26本塁打にして1~9番まで全打順で本塁打(通算6人目)」

「投手を含む全ポジションでの出場(通算2人目)」

 なおNPB公式サイトには五十嵐の投手成績も載っていて、根尾昂の投手転向用フォーマットを用意できた1人と言ってもいい(はず)。

 五十嵐は試合前のシートノックで“その日守るポジション選手が少ないところ”に入っていたと読んだことがある。試合前から“今、自分が生きるのはどんなポジションか”というのを徹底して考えていたという――三木も塀内もしかりだが、そういった姿勢が仕事をする上で大事なことなのかも、と今さらながら感じ入ることばかりだ。

 三木は24日に決死の守備で負傷離脱した福田秀平に対してもメディアを通じて「もう1回、あきらめちゃいけないなっていう気持ちは再確認することできたと思う」と、アツいコメントを残している。苦しい状況こそ、ムードメーカーの役割はやっぱり大事。だからこそ三木にはベンチから盛り立ててもらって、ゆくゆくは五十嵐を超える出場試合数、さらには意外性の一撃を終盤戦の勝負所で――ぜひ今度は初球で決めてほしいなと願ってます。

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