作り始めの頃はよく又吉さんに相談してました
――歳時記にはずいぶん親しんでいるようですが、好きな季語ってありますか?
村上 「風花」とか、使ってみたい季語ですね。晴れてる日にどこからか降ってくる雪。でも、季語自体が美しすぎて、僕が何か付け加える余地なんて、ないかも。俳句やっていると、壮大な自然にも、日常の中の自然にも発見が生まれてくるなって、実感してます。
――芸人のみなさんで句会する機会はないんですか?
村上 まだ句会するほどの俳句仲間はいないんですけど、又吉さんが俳句をされるので、作り始めの頃はよく又吉さんに相談してました。「ちゃんと作れてます?」「それを切り取ろうとした感覚はええんちゃう?」みたいな。
――村上さんは又吉さんと同じ80年生まれですよね?
村上 そうです。ただ、又吉さんはNSCの5期先輩なんです。いつだったか飲みながら、5文字でうまく秋を表現できるのはどっちだ、って遊びました。俳句の練習みたいですよね。
――又吉さんの俳句にはどんな感想を持ちますか?
村上 カッコいいんですよ。よくそういうとこ見てんなあって唸ります。『火花』に芸人の先輩と後輩が携帯メールでふざけた言葉を送り合う場面があるんですけど、あのメールの文面にある一言とか、詩ですよ。「泣き喚く金木犀」とか。自由律俳句っぽい。
僕みたいなおしゃべりには、俳句の縛りが合っている
――村上さんは小説にチャレンジしないんですか?
村上 いやー、僕はおしゃべりなんで、小説を書いたら余計な描写ばっかりしちゃうんじゃないかな。安っぽい常套句ばっかり使って(笑)。だから、定型の縛りがある短歌とか俳句の方がいいんだと思います。
――好きな一句ってありますか?
村上 「雪まみれにもなる笑つてくれるなら」。櫂未知子さんの句です。なんか、笑わせることの幸福ってこういうことだよなあって、すげーいいなーって思うんです。芸人だから特にそう思うのかもしれませんけど、いつかこういう笑いがあることの幸せを句にしてみたいです。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
むらかみ・けんじ/1980年茨城県生まれ。青山学院大学経済学部卒。2005年、亘健太郎とフルーツポンチ結成。NSC10期生。