プロ野球ロッテの佐々木朗希投手は後半戦で、本来の姿から遠いマウンドが続いている。3試合の登板で計17回1/3を投げ、13失点。完全試合を達成したシーズン序盤の面影はない。

 球宴では日本ハム時代の大谷翔平(エンゼルス)に並ぶ最速162キロをマークした。一方で初球から16球連続、全23球中21球が直球という同僚捕手、松川虎生のリードで結果は1回を3安打1失点と芳しくなかった。相手打者が確信を持って直球を待てた配球だったとはいえ、最大の武器を打たれた。球宴に5度以上も出場した元捕手は「たかがオールスター、されどオールスター」と球宴に潜む“落とし穴”を指摘する。この元捕手とともに「令和の怪物」の変調の背景を探った。

オールスターに登場した佐々木朗希 ©時事通信社

直球への自信喪失

 佐々木によると、球宴での配球は全て松川任せだったという。

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「僕はもっと変化球を投げたかったが、全然サインが出なかった。松川のせいで打たれました」

 球宴登板後のインタビューでは冗談めかしながら年下の捕手への“恨み節”を口にした。

 一方、松川は「フォークよりも直球で三振を取る。オールスターではずっと直球を放るというのもあると思う」と公式戦では不可能な直球一辺倒の配球にした意図を説明した。

松川と話をする佐々木 ©時事通信社

「セ・リーグは本当に強いので、真っすぐだけじゃ無理」

 佐々木も直球攻めのサインに首を振らなかった。元捕手がその時の佐々木の心情を分析する。

「当然、直球には自信を持っていたと思う。直球だけでも抑えられるのではないかという自分への期待は少なからず、あったかもしれない」

 実際は直球で空振りをとることもままならず、この日最速162キロの直球はウォーカー(巨人)に安打にされた。奪三振もなかった。佐々木は「セ・リーグは本当に強いので、真っすぐだけじゃ無理です。変化球を投げないと、危なく終わらないところだった。直球だけで抑えるのは難しいですね」と言うしかなかった。

 160キロ超の直球も高速のフォークボールなどを織り交ぜてこそ威力を発揮するという現実を突きつけられた。