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今、完全試合の雰囲気はない

 佐々木は後半戦、楽天、ソフトバンク相手に2連敗スタートになった。3試合目の楽天戦に勝ったもののプロ初の複数被本塁打となる3本塁打を浴び、5失点を喫した。3試合の失点は5、3、5。被安打も8、5、5といつでも完全試合を達成しそうだった序盤の好調さは影を潜めている。

大船渡高校時代の佐々木朗希 ©文藝春秋

「佐々木は、公式戦では直球オンリーの配球はしないと分かっていても、球宴であれだけ直球を打たれると少なからず自信を失うもの。確かにオールスターは花試合だが、公式戦に悪影響したケースはこれまでも多々あった。佐々木の場合は直球を投げる時に、迷いや不安が生じるようになったのではないか。逆にパ・リーグの打者はセの打者が直球を打つ姿を見て、自分たちも打てると思えたのではないか。プロでは少しでも弱みを見せると、つけ込まれる。実力が紙一重の世界では、わずかなことで力関係が変わる」

 オールスター戦は、特に好調時の選手が出場を敬遠するケースが多い。前半戦の疲労を取り除く機会を逸する上に、維持してきた投球や打撃が普段とは異なる状況でプレーすることで、崩れる可能性があるからだ。

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佐々木朗希(2021年) ©文藝春秋

 大リーグでも昨年、大谷がオールスター戦の本塁打競争で、スタンド狙いの引っ張り一辺倒の打撃を行い、後半戦にホームランのペースが落ちた。本塁打王を逃した一因に挙げられるほど球宴期間がマイナスに作用してしまった。

昭和の時代は敵に塩は送らなかった

「昭和」の時代は、選手間の情報交換などは“御法度”だった。中日で219勝を挙げた山本昌は自らの投球技術の核心が漏れることを恐れ、ヒントにつながるような言動は厳に慎んでいたという。ほとんどの選手が公式戦で自分に不利にならないよう、細心の注意を払った。オールスター戦に出てくるような一流選手には、敵に塩を送るような行為はなかった。

 それが今は投手が変化球の握りを教え合うなど、選手同士が盛んに交流する場に変わった。