2017年は、物流業界の「運賃」「料金」にまつわるニュースが目立つ1年だった。その中でも最大のトピックは、何と言っても宅配大手3社の値上げ表明だろう。

 先陣を切ってヤマト運輸が10月に価格を改定し、11月には佐川急便もこれに追随。日本郵便も9月に値上げを打ち出しており、来年3月から「ゆうパック」の基本運賃を平均12%引き上げる(物流ニッポン2017年9月11日付「日本郵便 基本運賃上げ来年3月 ゆうパック配達 希望時間の選択肢広げ Web決済割引を導入」)。宅配便の国内シェアが3社で93%に達していることから勘案すると、国内で取り扱われている宅配便の大半が値上げされることになる。

宅配大手の値上げが相次いだ ©iStock.com

価格にシビアだった消費者

 消費者にとっては耳の痛い話だが、これまでは宅配事業者の懐も痛んでいた。インターネット通販の拡大を背景に、今や国内の取扱個数は年間40億個を突破。この数をさばくには、十分な人員を集めなければならず、人件費を確保するためにも値上げは不可欠だ。しかし、通販ではあらゆるものを安く買うことができ、中には「送料無料」を打ち出しているところもある。こうした中で、宅配事業者に対して支払う運賃を引き上げる通販業者は少なかっただろう。

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 だからこそ、宅配事業者は価格改定に動いた。まず、大手メーカーや通販サイトを運営する大口顧客と折衝。しかし、価格に対して最もシビアなのは、消費者だった。

 ファッションショッピングサイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが10月、利用者が送料を自由に選べるサービスを試験的に行ったところ、全体の43%が「0円」と設定。平均でも96円となり、通販の利用者がいかに「送料を払いたくない」かが浮き彫りとなった。

 送料をもらえなければ、運送会社は「タダ働き」となる。こうしたことが蔓延すれば、運送会社は疲弊し、物流が産業として立ちいかなくなる。ただ、運送費の全てではないが、かねて物流業界ではタダ働きが指摘されていた。いわゆる「料金」の未収受だ。

©iStock.com

 運送会社が荷物の送り主(荷主)から受け取っている運送費は、大きく「運賃」「料金」の2種類に分けられる。このうち運賃は、トラックでの輸送といった運送そのものに対する対価のこと。一方、料金は、荷物の積み込み・積み下ろしのほか、棚入れ、ラベル貼りなど付帯作業への対価を指す。ただし、運送会社が契約条項などを定める約款には、これまで料金の規定がなく、運賃とは別に料金を収受できる例は、極めて稀だった。

 そのため、運送会社は運賃・料金をひとくくりにした運送費を受け取っていたが、この中に付帯作業料が含まれているとは言い難かった。また、荷主側も、付帯作業に対して料金を払う習慣がなかったことから、運送会社への要求はエスカレート。荷物を下ろした後も指定の場所まで運ばせるため、「フォークリフト免許のないドライバーは来させないでくれ」と注文を付ける荷主もいるほどだった。

 そこで、「貨物自動車運送事業」を所管する国土交通省は、約款の改正に動いた。各運送事業者が示す約款のモデルとなる「標準貨物自動車運送約款」を改正し、11月4日から施行。付帯業務の内容を明確にし、運賃と料金を区別した。