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 7月はチームの負けが込むほど大谷のトレード報道が過熱し、10球団以上が獲得を打診していたことが判明したが、「大リーグで最も現場に介入するオーナー」と評されるモレノ氏は頑として首を縦に振らなかった。しかし、その水面下では財務のエキスパートのパートナーを選定するなど、着々と球団売却の準備を進めていたことになる。

「身売りする計画があったなら、大谷のトレードに動かなかったことは合理的な理由になる」(米駐在記者)。

「身売りする計画があったなら、大谷のトレードに動かなかったことは合理的な理由になる」 ©時事通信社

「球団は売っても大谷は売らない」

 モレノ氏はメキシコ系米国人で、広告業で財を成した。03年途中、ウォルト・ディズニー社からエンゼルスを買収すると、スペイン語圏のマーケットを開拓し、中南米のファンを取り込んだ。米誌には「影響力があるマイノリティー」1位に選ばれるなど、“やり手”として知られた。

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 エンゼルスは買収前年の02年にワールドシリーズを制覇していた。モレノ氏は黄金時代をもくろみ、プホルス(現カージナルス)らスター選手を次々と補強したが、“外れ”が多かった。巨額契約を結んだトラウト、レンドンも故障がちで、額面通りの働きができておらず、今季も8年ぶりのプレーオフは絶望的だ。

 特に大谷入団後は不振が際立ち、監督とGMが立て続けに交代した。

「大型契約をしてもらったトラウトのように特定の選手受けは良かった半面、現場への口出しが多く、球団や首脳陣には煙たい存在だった。オーナーが関与すればするほどチームは低迷を極めていった」(前出の記者)

大谷とトラウト ©時事通信社

 その一方、球団の価値は買収時の1億8400万ドル(約252億円)から桁違いに高まった。今売却すれば25億ドル(約3400億円)との試算さえある。

「二刀流で100年に1度の選手と言われ、価値がピークに達した大谷の保有権を持っていることは大きい。モレノが、今が最適のタイミングとしたのは大谷が切り札になり、有利に交渉できるとの目算があるからだろう。さすがに売り時を読む目は鋭い」(前出の代理人)