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《羽生プロ転向、大谷球宴出場》「オレオレ感はまるでない」大谷翔平、羽生結弦…1994年生まれのアスリートが“最強世代”である理由

2022/07/20

「プロのアスリートとしてスケートを続けていくことを決意しました」

 7月19日、フィギュアスケート男子で五輪連覇を達成した羽生結弦が会見を開き、第一線を退く意向を示した。その翌日である20日には、海を渡ったアメリカでは、エンゼルスの大谷翔平がメジャーで2度目のオールスター戦に「1番・DH」で出場する。

 羽生と大谷はともに1994年生まれの同世代。かつて大谷はテレビ番組で「僕らは羽生世代」と言い切ったことがあった。この世代からは、羽生、大谷以外にも水泳の萩野公介、スピードスケートの高木美帆、野球の鈴木誠也、サッカーの南野拓実などあまたの逸材が誕生した。なぜ94年生まれに傑出した才能が集まったのか? スポーツジャーナリスト吉井妙子さんの記事を再公開する(初出 2021年6月22日 年齢、肩書等は当時のまま)。

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 ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平の快進撃が止まらない。二刀流どころか、盗塁やセフティバントで足の速さを見せつけたと思えば、外野の守備もこなし、投・打・走・守の“四刀流”をいかんなく発揮している。日本球界関係者はそんな大谷を「漫画の世界」と半ばあきれ気味に語り、米国のTV解説者は「彼は日本人じゃない。宇宙人だ」と遂に未確認生命体呼ばわり。大谷はそれだけ傑出した選手といえる。

オールスターのホームラン競争にも出場予定の大谷翔平 ©時事通信社

逸材が揃い踏みした94年生まれのアスリートたち

 大谷がメジャーに移籍し、羽生結弦が平昌五輪で2度目の金メダルを獲得した2018年春、彼らの誕生年である94年度生まれのアスリート特集が組まれたことがある。水泳の萩野公介、瀬戸大也、バドミントンの桃田賢斗、奥原希望、スピードスケートの高木美帆、レスリングの川井梨紗子、土性沙羅、柔道のベイカー茉秋、野球では藤浪晋太郎、鈴木誠也、サッカーの浅野拓磨や南野拓実など、各競技を代表するような逸材が揃い踏みしたからだ。

 彼らは当時、「ゆとり教育」の産物として語られることが多かったが、果たしてそれだけのくくりで捉えていいのかとちょっとした違和感があった。

羽生結弦 ©文藝春秋

 これまでも同学年が活躍する世代のくくりはあった。80年度生まれの「松坂世代」、79年度生まれの「黄金世代」など。いずれも野球やサッカーという一競技に限った現象だったが、94年組は競技が多岐にわたっているところが新しい。

 そもそもなぜ、ある年代に集中して選手が活躍する現象が生まれるのか。それは、教育現場や労働経済学の分野で度々論じられる「ピア効果」ともいえる。ピアとは仲間や同級生などの意味で、意識や能力の高い集団の中に身を置くことで切磋琢磨し、お互いを高め合う効果のことをいう。簡単に言うなら、身近にいる能力や意識の高い人に刺激を受けて、自分も頑張ろうというモチベーションが湧く現象だ。松坂世代や黄金世代はまさにピア効果と言ってもいい。

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