衝撃的な“身売り”宣言だった。
米大リーグ、大谷翔平(28)が所属するエンゼルスは8月23日、球団売却を検討する手続きに入ったと発表。アート・モレノ・オーナー(76)は「20シーズン、エンゼルス球団を保有できたことは名誉であり、特権だった。熟慮に値するものだったが、私と家族は、今がその時との結論に達した」と声明を出した。
チームは2014年を最後にプレーオフ進出がなく、今季も早々とプレーオフ争いから脱落。シーズン途中でのジョー・マドン監督の電撃解任、大谷のトレード騒動、そして売却に向けた動きの表面化――激動の球団の内情を探った。
再開発白紙で球団経営に見切り?
「今考えると、あの一件が引き金だった。そう考えると、全て腑に落ちる」
米大手マネジメント会社のベテラン代理人は納得顔で語った。
「あの一件」とは5月下旬、エンゼルスタジアム周辺の再開発を巡るアナハイム市のシドゥー市長が不正疑惑で辞任に追い込まれたことだ。同市が球団に、同スタジアムとその一帯の土地を売却する交渉で、市長が機密事項を漏らす見返りに巨額の選挙資金の供与を受けようとしていたとしてFBIが捜査に乗り出したのだった。
直後に同市議会は球団への売却を白紙撤回。モレノ氏が目指した再開発は暗礁に乗り上げた。
6月、チームは球団新記録の14連敗を喫した。マドン監督は大型連敗の責任を取らされる形でチームを去った。
「マドンは、モレノがチーム再建のため三顧の礼で迎えた名将だった。成績は物足りなかったが、大谷の二刀流の進化に大きく貢献した。それでも、3年契約の最終年の今季開幕前に球団は契約延長交渉に応じなかった。不測の事態を予期していたのか、再開発が頓挫したことで、モレノは一気に球団経営に見切りをつける方向に気持ちが傾いていったのではないか」(同前)