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球場観戦は「コスパの悪い」娯楽だが…

 とはいえ、もともと負けが込むことへの耐性は、他よりずっと持っているのがマリーンズファン。己を納得させる“いいとこ探し”は、わりと得意なほうだとも自負しています。

 だけどもちろん、負けて悔しくないわけでは全然ない。

 とくに、オールスター明け以降、9月7日の時点でも、ビジターの8勝7敗に対し、3度の3タテを含む5勝12敗と大きく負け越しているホームでの戦いぶりは、それこそ「いかがなものか」です。

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 襲いくるストレスをどうにかこうにかやり過ごす方法を、長年をかけて会得したというだけで、やっぱり求めるのはチームの勝利であり、ロマンあふれる選手たちの躍動。会得した“特殊能力”だって、大前提としてそこに希望を見出せなければ、発動することも叶いません。

 しかも、なにかとコスパが重視される昨今では、映画1本を観るための1800円さえ「もったいない」とされて“ファスト映画”なんてものが流行り、本編自体をNetflixなどのサブスク配信に搭載の“倍速再生機能”で観る人も多い。

 事前に下調べをして“ハズレ”を回避すれば、まず確実に満足感を得られる映画や観劇、テーマパークなどとは違い、お金を払って「腹が立つ」ことも多々あるスポーツ観戦。とりわけサッカーやバスケのように試合時間も決まっていない野球は、もっともコスパの悪い娯楽のひとつでもあるわけです。

 ちなみに、厚生労働省が2019年に発表した『国民生活基礎調査の概況』によると、日本の平均世帯年収は約550万円とのことですから、ボーナスなどを度外視すると、月々だいたい46万円。ちょっとググると、毎月のおこづかいは「月収の10%を目安にするのが望ましい」と出てきますから、1家庭あたりが自由に使えるお金は5万円弱、というのが、おおよその実情かと思います。

 一方、家族で球場観戦をしようと思うと、ぼくの肌感覚でも2万円近くはどうしてもかかる。

 ここ数年はダイナミックプライシングでチケット価格も高騰していますし、マリーンズファンは遠征も好き。年間で考えれば「いや、もっと使ってる」という方もきっと多いことでしょう。

 それを高いか安いか、どちらに取るかは人それぞれ違うにしても、球場観戦は決して安くないお金がかかる「コスパの悪い」娯楽だということ。

 かの里崎智也さんも、ご自身のYouTubeで「引退するまで新幹線の切符の買い方をよく知らなかった」といったようなことをおっしゃっていましたが、そもそもプロ野球選手は移動や食事に一銭もかけずに「野球をする」ことでお金がもらえる選ばれし人々。

 でもだからこそ、そこに無頓着にならずに「野球を観る」という行為への出費をいとわないファンの気持ちにも、ちょっとばかりは思いを寄せていただきたい、と思うのです。

 折りからのコロナ禍&物価高で、この9月からはロッテの主力菓子類はもちろん、多くの品物が続々値上げ。「お値段そのまま」で内容量が減る、いわゆる“シュリンクフレーション”も起きています。

 残るホームでの戦いは、7試合。さすがに「全勝して」とまでは思いませんし、この際、采配云々なんていう野暮なことも言いません。

 ただ、できることなら、来季の希望の持てるプライスレスな戦いを。シュリンクフレーションのような“実質値上げ”の「コスパの悪い」試合にだけはしないでいただけると幸いです。

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