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名将不在で個人主義台頭

 攻撃面でのチーム意識の希薄化を挙げる声も少なくない。ヤクルト、ソフトバンクやMLBで救援投手として活躍した五十嵐亮太氏は、打線が一丸となり、あの手この手で1人の投手を攻略しようとするシーンが減ったと言う。山崎氏も「今は、初回からバントなどの作戦を立てなくなった。(試合の)中盤までは個々のポテンシャルで行こうぜ、と」と同様の見解だ。元NPB監督が語る。

「野村(克也)さんや星野(仙一)さんが指揮を執っていた頃までは全員野球で好投手を崩そうと躍起になっていた。ベンチが方針を明確にし、選手は駒として動くのが当たり前だった。しかし、今の選手は大リーグの影響もあって個人主義が強くなり、同時にプレッシャーに弱くなった。鉄拳制裁はもちろん、選手が萎縮するから強く叱責することもままならない。個性が強い監督が陣頭指揮を執るようなベンチ主導の攻撃はますます減っていくのではないか」

星野仙一氏 ©️文藝春秋

 投高打低の背景として、他にも公式球が飛ばなくなったなどの原因を挙げる説はある。しかし、こうしてみると、「日本野球のメジャー化」が攻撃を劣化させてしまったとも言えるのではないか。

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 来春にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催される。攻撃陣は大谷翔平(エンゼルス)、村上宗隆(ヤクルト)、山川穂高(西武)らが候補で、ホームランバッターがずらりと並ぶ期待感がある。

大谷翔平 ©️文藝春秋

 かつて日本代表は「スモールベースボール」を標榜し、06年、09年とWBC2連覇を果たした。優勝を経験した元日本代表コーチは「WBCでは勝ち進むほど1点を取ることが困難になる。ホームランバッターに自由に打たせて点が取れるほど甘くない。バント、エンドランなどの小技に機動力を駆使し、しぶとく1点をもぎ取る攻撃は日本の真骨頂だった。ベンチが指示を出したとしても、今のバッターが高い成功率で実行できるのだろうか。優勝への道は険しいのではないか」とみる。

 WBCでの14年ぶりの覇権奪回へ、投高打低が暗雲を垂れ込めさせている。