「迷走」を繰り返した第三者委員会の調査活動
今回の調査の関係者によると、第三者委員会がまとめた最終報告書案は全7章で構成され、遺族側に提出されたのは「廣瀬さんが死亡に至った過程の検証」「いじめの検証及び考察」「認定した事実関係と経緯についての調査結果」の3章分(計120ページ以上)のみ。「当時の学校と市教委の対応」「再発防止策」など残る4章分はさらに時間が必要と説明し、9月5日時点で遺族側には渡っていない。
第三者委員会は小児科医、臨床心理士、大学教授、弁護士ら9名の調査委員で構成されているが、これまで、同委員会の調査活動は文字通り「迷走」を繰り返した。
「イジメ問題に精通した専門家、特にイジメPTSDの治療に当たった臨床経験の豊富な医師や、イジメ被害者のケアに従事した心理士が旭川市内では見つからず、重大事態の調査に必要とされる、遺族の希望していた高度な専門的知見を持った委員は選ばれませんでした。遺族との協議も噛み合わないことが多く、時には激しい怒号が飛び交い“大荒れ”になることもあったそうです」(遺族側の支援者)
イジメによるPTSDと“自殺との因果関係”は「疑問」だと判断
さらに遺族側が憤りを感じているのが、予定から大幅に遅れて提出された最終報告書案に爽彩さんの死とイジメの因果関係が全く検証されていないことだった。前出の調査関係者が語る。
「最終報告書案では中間報告通り中学の先輩7人が関与した6項目をイジメと認定しています。また、被害者の死亡についても失踪直前に『きめた』『今日死のうと思う』『ごめんね』とSNSに書き込みを残していたことから、自殺とする見解を示しています。イジメの被害にあってから、天真爛漫だった彼女の表情から笑顔はなくなり、部屋に引きこもるようになった。5月には母親に『ママ、死にたい』と洩らし、ウッペツ川への自殺未遂後はイジメのフラッシュバックに苦しみ、医者からはPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断を受けていました。しかし、16カ月もの期間調査を行ってきた“自殺との因果関係”については医学的な観点から説明が示されていません。調査の放棄とも言えます」
第三者委員会は最終報告書案の中で爽彩さんが自殺に至った背景について、遺族の主張していた「イジメによるPTSD」という診断に不可解な判断を下しているという。