昨年3月に当時14歳だった廣瀬爽彩(さあや)さんの遺体が見つかって1年半、イジメを受けてから3年半。世間を震撼させた“凄惨な事件”は大詰めを迎えようとしている。

 2022年8月31日、イジメについての事実確認や爽彩さんが亡くなったこととの因果関係の再調査を進めてきた第三者委員会は、最終報告書案の一部を遺族側に提出した。文春オンラインの取材で、その最終報告書案には爽彩さんの死とイジメとの因果関係について、検証すらされていなかったことがわかった――。

廣瀬爽彩さん

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第三者委員会が「8月末までに提出する」はずだった最終報告書は

 昨年2月13日に自宅から失踪し、3月に旭川市内の公園で雪の中で亡くなっているのが見つかった爽彩さん。文春オンラインでは2021年4月から記事を公開し、爽彩さんが中学入学直後から凄惨なイジメを受けていたこと、失踪直前までそのイジメによるPTSDに悩まされていた事実などを報じてきた。

 再調査を行ってきた第三者委員会は今年4月に公表した中間報告で「イジメとして取り上げる事実があった」として性的なイジメ、深夜の呼び出し、おごらせる行為など中学の先輩7人が関与した6項目をイジメと認定した。それまで「イジメと認知するまでには至らない」としていた旭川市教育委員会もイジメを認め、遺族に謝罪。その席で第三者委員会は最終報告書について、「8月末までに提出する」と遺族側に伝えていた。全国紙社会部記者が打ち明ける。

「期日(8月31日)の6日前の8月25日になって突然、第三者委員会から『報告が間に合わない』と遺族側に通達があったそうです。もともと昨年5月に第三者委員会が発足した当初は、11月までに調査結果をまとめるとの説明でした。しかし、『1000ページ以上の資料の読み込みに時間がかかっている』などの理由で11月の期限は白紙に。その後、昨年9月に今津寛介旭川市長が就任して『年内にまとめてほしい』と要望し、遺族側も『せめて失踪から1年となる2月13日までに』と求めていましたが、第三者委員会が報告時期の見通しやスケジュールなどを示すことはありませんでした。

 調査期間が長引くほど関係生徒たちの記憶も薄れ、被害者の同級生たちは今年の春に中学校を卒業してしまいました。高校は道教委の管轄となり、市教委では聞き取り調査を行うことが困難となります」

旭川市教育委員会 ©文藝春秋

 文部科学省の定める「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」では、調査時期・期間(スケジュール、定期報告)について、「被害児童生徒・保護者に対して、調査を開始する時期や調査結果が出るまでにどのくらいの時期が必要となるのかについて、目途を示すこと」と、明記されている。第三者委員会が最終報告の日程について「8月末」と期限を示したのは今年4月の中間報告後。調査開始から10カ月以上経過してからのスケジュール開示、自ら設定した8月末の期日を反故にするなど、ガイドラインを遵守しない第三者委員会の姿勢に、遺族側は不信感を募らせている。