「学校からも市教育委員会からも終始、爽彩(さあや)さんへの謝罪の言葉はありませんでした。第三者委員会の調査の報告もただ資料をかいつまんで読み上げるだけ。当事者意識が一切感じられませんでした。この学校に子どもを通わせている身として、こういった学校と教育委員会の杜撰な対応は不安しかありません」
11月18日、北海道旭川市にあるY中学校で行われた保護者説明会に参加した保護者はため息をつきながら語った。
ようやく開かれた「重大事態」についての保護者説明会
2021年3月、旭川で当時14歳の廣瀬爽彩(さあや)さんが凍死して見つかった事件に関し、文春オンラインはその背景にあった凄惨なイジメについて報じてきた。第三者委員会はいじめの事実を認定。性的なイジメ、深夜の呼び出し、おごらせる行為など中学校の先輩7人が関与した6項目をイジメだったとした。しかし、爽彩さんの死は「自殺と考えられる」としたものの、イジメとの因果関係については認定しなかった。
そして18日、旭川市教育委員会は第三者委員会の調査報告を受け、「本件重大事態の事実経過とともに、学校のいじめ防止対策や生徒の安全確保の取り組みなどについて」保護者に説明する場を設けた。文春オンラインは約2時間に及ぶ説明会の音声を入手。その音声には、市教育委員会の対応に保護者の不信感が渦巻く険悪な空気が記録されていた。
午後18時過ぎ、既に凍えるような寒さの季節となった北海道旭川市のY中学校。昇降口には多くのマスコミ関係者がカメラを構え、校舎の回りでは男性教員が見回りをするなど物々しい雰囲気を醸していた。集まった保護者の多くは待ち構えるマスコミを避けるように足早に校舎の中へと消えていく。
説明会の会場には市教育委員会から4人、そしてY中学校の校長や教頭など5~6人が保護者を待っていた。第三者委員会の調査の結果に関する報告という趣旨であったが、教育委員会の説明はあまりにもお役所的な内容だったと前出の参加者は語る。
「受付で渡された160ページ以上の資料をかいつまんで読み上げていました。広い体育館の中で延々と約30分にわたって資料を読み上げる姿にはどこか他人事のような印象がありました。もちろん、言葉では我々保護者や生徒に『ご心配をおかけしていること』については謝罪していましたが、遺族や亡くなった生徒への哀悼の言葉はありませんでした」