安倍晋三元首相と統一教会の関係はいつから始まったのか――暗殺事件から2カ月を迎えようとする今もその謎は残っている。だが、ジャーナリストの鈴木エイト氏は最近、その謎を解く大きな手掛かりとなりそうな文書を入手した。

 その資料とは、統一教会のフロント団体・天宙平和連合(UPF)が「21世紀 世界平和の為の 日本女性指導者セミナー」のために作成した冊子だ。

UPFが開催した安倍氏追悼セレモニー

 この冊子の38頁にはこうある。

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〈現在の課題となすべきこと

(1)第二次5カ年計画(基本計画)においてジェンダーという文言を使用させない。(略)

・安倍晋三官房長官と山谷えり子内閣府政務官でチェックできるように関係省庁、議員に積極的に働きかける〉

セミナーのテキストに安倍氏の名がある

最も初期の関係を示す冊子

「安倍晋三官房長官がチェックできるように……」とは、どういう意味なのか。鈴木エイト氏は「文藝春秋」10月号掲載(9月9日発売)の「統一教会“安倍派工作”内部文書」の中でこう書いている。

〈私は第2次安倍政権以降の安倍と旧統一教会の関係性を“共存共栄関係”と見立て、この9年間にわたり検証してきた。

 だが、そもそも安倍と統一教会の関係がいつ始まったのかについてはまだ謎が残されている。祖父岸信介以来の「三代にわたる蜜月」とよく指摘されるが、安倍が第3次小泉改造内閣で官房長官になる頃まで関係は確認されていない。はっきりわかっているのは、2005年10月、官房長官に就任する直前に、UPFの創設記念広島大会に祝電を送っていたという事実だ。

 今回入手した冊子は、安倍から祝電を受け取ったUPFが安倍の官房長官就任直後に作成したものとみられ、たしかに最も初期の関係を示すものと言えた。

 冊子の同じページには、次のような記載もある。

〔・第三次小泉内閣において猪口邦子議員が男女共同参画担当大臣になる。

 ・ジェンダー概念に執着〕

 冒頭で紹介した箇所とあわせるとこう読み解くことができる。

「ジェンダー概念に執着する猪口大臣が作成する5カ年計画において、ジェンダーという文言を使用させないため、官房長官の安倍、内閣府政務官の山谷がチェックできるよう関係省庁と議員に積極的に働きかける」

 UPFが統一教会の信者や関係者にそう呼びかけていたということだ。

 なぜ統一教会がジェンダーに反対するのか。なぜ安倍氏と山谷氏の名前を挙げるのか〉