松本人志との出会いで「夢だった画家」に転身
――現在は「画家」として、精力的に活動されています。
柴田 2年前の2月に六本木一丁目で偶然、松本人志さんをお見かけして。その瞬間にスゥッと頭の中に「この人のテレビ番組に出たら、絵を描いて個展をやろう」という考えが浮かんだんです。
その半年後、偶然『ワイドナショー』から出演依頼をいただいたんです。コロナで家にいる時間も長くなっていたし、そこから張り切って絵を描くようになったら、今度はテレビ局の知り合いが7年ぶりに連絡をくれて。今描いている絵を見せたら、画廊オーナーを紹介してくれる運びとなって、トントン拍子に画家デビューが決まりました。だから、画家デビューは松本人志さんのおかげなんです。
――10代の頃の「画家になりたい」という夢が実現したわけですね。
柴田 ようやくです。でも漫画家になって、無駄じゃなかったなと。実は美大時代に描いていた絵は、セザンヌみたいな古典的なものでした。
今のような現代的なタッチの絵が描けるようになったのは、間違いなく漫画を30年描いてきたから。そのおかげでほかの画家とは違う、独自の画風が身についたのだと思います。
柴田亜美が目指す未来
――もう漫画は描かないのですか?
柴田 絵を始めてからは、なかなか暇がありません。キャラクターデザインのような単発の仕事はやっているのですが。
――柴田さんはルポ漫画やエッセイ漫画も人気ですし、引き合いも多いのでは?
柴田 うーん……でも、今のいちばんの夢は画家です。縁あって漫画家にはなったけど、画家は高校生からの夢。今日までその時その時を一生懸命過ごした時間があってこそ叶った夢だから、今はこっちに専念するつもりです。
実は油絵って、40歳、50歳からのデビューもぜんぜん珍しくないんですよ。どうしてかと言えば、やっぱり最初から画家だけで食ってはいけないから。一旦会社勤めを経て、余裕ができてから描くという人は多いんです。
私が画家デビューしたのは54歳だから、あと20年、30年は描けるでしょう? だから嬉しいんです。今からまた新しいことに挑戦できるなんて、なんて幸せなんだろうって。
柴田亜美
長崎県出身。『南国少年パプワくん』『ジバクくん』『PAPUWA』などの作品がTVアニメ化され、これまでの著書は累計発行部数2,000万部を超えている。2021年には「KOMIYAMA TOKYO」から画家としてデビューした。
写真=深野未季/文藝春秋
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。