正念場を迎えたメルカリの米国進出
IT業界の新星として名を馳せたフリマアプリのメルカリ(山田進太郎CEO社長)が、正念場を迎えている。
2022年6月期に再び赤字転落。期待の米国事業は流通総額が減少し、国内の成長率も減速傾向にある。
そこで取り沙汰されているのは経営陣の刷新だ。米国子会社のCEOを務めるジョン・ラーゲリン氏は17年に三顧の礼で迎え入れたフェイスブック元幹部だ。
コロナ禍の在宅特需で一時勢いを得たものの、日本のブランドを海外で浸透させるのは難しい。株式市場からは「トップを替えるか、事業を撤退しないと、株価が持たない」との声が漏れ伝わる。
日本事業を統括するのが、元グリー(田中良和会長兼社長)幹部の青柳直樹氏だ。同氏も山田氏に請われる形で17年に決済・金融子会社メルペイの代表に就任、21年に暗号資産子会社メルコインの代表にもなった。今年からは、フリマアプリを含めた日本事業全般を指揮する。
青柳氏の出世に違和感を持つ社員も多い。メルペイはソフトバンク(宮川潤一社長兼CEO)らが出資するペイペイ(中山一郎社長兼CEO)にまるで歯が立たず、金食い虫のまま。メルコインは今年6月に金融庁への登録を完了したものの、競合他社から「あまりに遅い参入で、今さら何をするつもりなのか」と呆れられている。
青柳氏の後釜と目されているのが、同じくIT大手から移ってきたメルカリ会長の小泉文明氏だ。ミクシィ(木村弘毅社長)CFO時の手腕を買われ、現在はメルカリ傘下の鹿島アントラーズの運営会社社長も務める。
すでにメルカリは山田氏の共同創業者である富島寛氏、石塚亮氏が退職。両氏は米国事業を担ってきたが、成果を出せずラーゲリン氏が招聘された経緯がある。そのラーゲリン氏の後は、山田氏が自ら米国に乗り出すという観測もある。国内の稼ぎがあって初めて、海外投資も可能になる。創業来の世界挑戦という夢は遠のくばかりだ。
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「丸の内コンフィデンシャル」の全文は、「文藝春秋」2022年10月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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