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 実際には、恋愛時代のような熱烈な関係ではなくなったとしても良い父親、良い母親として連携しながら暮らしている人たちもいますし、「相思相愛の夫婦ではなくなった=裏切られた」というのは過剰な投影にすぎません。

 海外に目を向ければ、結婚以外にもパートナーシップを社会的に支えるための法制度が様々に確保されている国が少なくありません。現在の日本では、結婚以外の選択肢がないし、パートナーとの関係性となると“夫婦”以外をイメージしづらい。だからりゅうちぇるさんたちに対しても、ロマンティック・ラブ・イデオロギーによる結婚と理想的な夫婦関係というイメージを投影してしまっていたのではないかと思います。

「新しい形の家族」に対する誤解

 もうひとつ、今回の騒動で感じたのは、お2人が作ろうとしている「新しい形の家族」の意味が世間にうまく伝わっていないということです。

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 りゅうちぇるさんに対して「責任感がない」という意見を述べている人たちには、彼が一般的な家庭の“夫”や“父親”であることを放棄するように見えてしまっているのだと思います。一方で、りゅうちぇるさんは、2018年に「イクメン オブ ザ イヤー」の芸能部門を受賞した際、Twitterでこう発信しています。

《イクメンという言葉が無くなるくらい パパも子育てに当たり前に向き合えて 別にパパが子育てをしてても 全然驚かれないような 大切な子供を 夫婦で協力して話し合いながら育てていけるといいな...》

 さらに、自著『こんな世の中で生きていくしかないなら』(朝日新聞出版)では、自身が“ジェンダーレス男子”と呼ばれることについて違和感を綴っていました。

ryuchell(本人ツイッターより)

《僕は「ジェンダーレス男子」だと思って生きてきたわけじゃない。だから、その言葉に違和感があった。言葉だけが一人歩きしているような気がしていた》

《それまで見たことがなかった僕のような人間に、「ジェンダーレス男子」というカテゴリーをつくって、当てはめておくことで安心したんだと思う》

 これらの発言からわかるのは、りゅうちぇるさんは“レッテル貼りから自由になる”ということを考えてきた人だということです。実際に性別については、男女を区別しない呼び方がいくつも出てきていますよね。