人は誰もが老いるのだが、「老い」とか「老化」についてはよくわからない、よく知らないという人も多いのではないだろうか? 老いに対する正しい知識がないと過度に不安になったりして、不幸な老い方をしてしまう可能性もある。

 ここでは、老年医学の専門家・和田秀樹氏が「これだけは知っておかないともったいない」という必須知識をまとめた『老人入門 - いまさら聞けない必須知識20講 -』(ワニブックス)から一部を抜粋。「認知症は病気ではない」と話す和田氏の“認知症の捉え方”を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

写真はイメージです ©iStock.com

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認知症は老化現象のひとつで病気ではない

「認知症にだけはなりたくない」と考えている人は多いと思います。

「歳を取るのも身体が弱ってくるのも仕方ない。でも認知症になって何もできなくなるのだけは厭だ」

「家族にも迷惑をかけるし誰からも相手にされなくなる。晩年が認知症じゃ、幸せな人生とは思えない」

 そういう不安に捕まってしまうと、ますます高齢になっていくことへの心細さが膨らんでくるでしょう。

 そこでまず、持たなくていい不安に振り回されないためにも、認知症についての正しい知識をいまのうちにしっかりと身につけておきましょう。ポイントはふたつです。

 (1)認知症は老化現象の1つである

 (2)老化だからゆっくり進み、個人差も大きい

 認知症を恐れる人は徘徊したり妄想がひどくなって暴れるような高齢者を想像してしまいます。あるいは何もわからなくなって身のまわりのこともできないような状態です。 

「ああいうふうになったらおしまいだな」と思えば、どんなによぼよぼになっても認知症にだけはなりたくないと考えてしまいます。

 でも認知症は病気ではないとするのが私の考え方です。症状は現れるけど、あくまで老化現象のひとつであって、高齢になれば筋肉が落ちて足腰が弱るとか、視力や聴力が衰えるのと同じです。病気なら薬で改善したり進行を止めることもできますが、老化現象となれば薬では治せません。

 徘徊や妄想は認知症の周辺症状と呼ばれます。認知症になれば全員に徘徊や妄想が現れるのでなく、まったく現れない人もいれば現れてもすぐに収まる人もいます。置かれている環境や周囲の接し方、あるいは本人の受け止め方によっても違ってくるのです。