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初期の認知症で困ることは何もない
ところが認知症がある程度進んだ後のもの忘れでは夕食を食べたことを忘れています。
全体の記憶がなくなっているのです。
「オレ、昨日晩ご飯食べたっけ?」となります。
「何言ってんの、私が餃子を手作りしたでしょ」と妻は機嫌悪くなりますが、「そうだった、美味しかったなあ」と思い出せなくても頷いていればいいのです。
道がわからなくなってもスマホのナビがあります。
待ち合わせの約束を忘れても相手が電話をかけてきます。
壁やカレンダーに予定を書き込んでおけばたいていのことは思い出します。
買い物に出るときにリストを作るのは誰でもやっていることです。初期の認知症で困ることは何もないし、ふつうの人と同じように生活できるのです。
そして認知症はゆっくり進行していきます。いつ発症したか周囲の人にも気がつかないくらいゆっくり始まり、「ほんとに認知症なの?」と疑う人がいるくらいしっかりした論理性や思考力を保ちながらも本人だけは「やっぱり以前とは違うな」と気がつきます。その程度です。
つまり認知症とはっきりわかっても慌てることはないし、悲観することもありません。
むしろ老いれば誰にでも訪れる症状のひとつに過ぎないのですから、老いを受け入れるつもりで認知症も受け入れてしまっていいと思います。悠然と構えて、ボケを飼い慣らしながら老いを楽しんでみる。嫌なことや都合の悪いことはとぼけてしまう。そういう割り切った暮らし方を心がけてください。