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 たとえばロナルド・レーガン元アメリカ大統領は退任して5年後に自らのアルツハイマー病を告白しましたが、そのときのとんちんかんな症状を見る限り、大統領在任中にすでに記憶障害くらいは発症していたと思われます。初期のころならアルツハイマー病でも大統領が務まるのです。「記憶にございません」を連発する日本の政治家だって、あとで認知症がわかって「ああ、やっぱり」ということになるかもしれません。

 つまり認知症というのは、初期のころならそれがただのもの忘れなのか記憶障害の症状なのか、本人も周囲も判別できない程度の軽い症状に過ぎず、しかもそういう状態が長く続きながらゆっくりと進行していくものだと受け止めてください。恐れたり慌てることはありません。

 むしろ「認知症だったらどうしよう」と不安になって、思い出せないことや忘れてしまうことだけを気にしていると、前頭葉の老化が加速されたり不安に包まれて感情の老化も進んでしまいます。

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 最悪、気持ちが落ち込んでうつ状態になりかねません。後述しますが、高齢になると認知症よりうつ病のほうが怖いのです。

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老いればだれでもボケる、ボケを飼い慣らしながら老いていこう

「やはりおかしい」と自分でも不安になったり、家族にも勧められて医者に診てもらい、はっきり認知症と診断されたとしても落ち込まなくて大丈夫です。

「私もとうとう」とショックを受けるかもしれませんが、認知症で寝込んだり体調が悪くなることはありません。急にできないことが増えるわけでもないし、相手の話を理解できなくなるわけでもないのです。

 初期のうちはせいぜい、直近のことを忘れるという程度です。何年も前のことは覚えていても、ちょっと前のことを思い出せなくなります。細部を思い出せないのでなく、全体の記憶がスポッと抜けてしまいます。よく例に出されるのが昨日の夕食です。

「昨日の夕食には何を食べたか」と訊かれて思い出せないことは誰にでもあります。「何食べたっけ?」と必死で考えて「ああ、昨夜は自宅で久しぶりに妻の手作りの餃子を食べたんだ」と納得します。