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「入閣は次でいい」森喜朗、青木幹雄らとの会食で岸田首相が頭を下げたドンの言葉《茂木交代も主張》

赤坂太郎

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「萩生田を頼って欲しい」と語っていた安倍

 岸田は麻生への気配りを欠かさない。その約1か月前の7月6日。日本青年会議所(JC)は麻生太郎の長男、将豊を来年1月から次期会頭にすると内定した。親子2代でJC会頭に就く稀有な人事。今期限りでの太郎の引退も囁かれる中、将豊は父の地盤を継ぎ、その血筋から小泉進次郎、福田達夫のライバルになるとも目される。7月16日には岸田は横浜市内で開かれたJCのセミナー会合に出席し、JC会頭の中島土と「新しい資本主義実現に向かってJCが果たすべき役割」について対談。岸田は将豊の顔を立てた。

 岸田は統一教会の火消しはうまく行ったと踏んだが、そうは問屋が卸さなかった。新閣僚のうち、厚労相の加藤勝信、総務相の寺田稔、そして留任した山際などに統一教会との関係が発覚。統一教会問題よりも、「大宏池会」を睨んで麻生への配慮にばかり目が行っていた岸田の甘さが出た格好だ。

 岸田には、安倍亡き後の清和会という懸念材料もある。最大派閥ながらこれといった人材なき烏合の衆――そこで内紛が始まったら、政権を揺るがしかねない。まず岸田が接触したのは前経済産業相の萩生田光一だった。

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「留任か党役員か。どちらにしても受けてほしい」。内閣改造3日前の8月7日、公邸に裏側から入った萩生田に、岸田はこう告げた。萩生田を党に、西村康稔を閣内に置き、官房長官の松野博一、国会対策委員長の高木毅、参院幹事長の世耕弘成は続投させるというのが岸田の戦略だった。安倍は生前「萩生田を頼って欲しい」との言葉を岸田に残していた。対外的には派内で期待するリーダーとしてこの「五人衆」を挙げた安倍だが、意中の後継者は萩生田だった。

萩生田光一氏(写真右)と生稲晃子氏 ©共同通信社

 だが、萩生田を頼ろうとした岸田の戦略は裏目に出る。参院選期間中、新人候補の生稲晃子を伴い統一教会の関連施設を訪れ応援を依頼していたことが判明。萩生田は猛批判に晒され、逆に政権の足を引っ張る存在となった。岸田は清和会のドンにも手をのばす。