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地元客の乗降はわずか。先行して廃止された駅も

1両編成であることを告げる長万部駅改札口の電光掲示板

 私も含めて座りきれないほどの旅行者が乗り込んだ盛況の1両編成のディーゼルカーは13時29分、定刻通り長万部を発車。苫小牧方面へ向かう室蘭本線が右の車窓の向こうへ消え、清涼な高原地帯をトコトコ走る。

 ときどき見られるトウモロコシ畑以外に、人が生活している雰囲気が感じられない。好天に恵まれた車窓には、青空と緑の原生林が明るいコントラストとなって映り続ける。

 次の二股駅の駅名標を見ると、「くろまつない」という次の駅名が、もとの隣駅名の上からステッカーで貼られて表示されている。以前はこの区間に「蕨岱」という駅があったのだが、利用客が少ないとの理由で平成29(2017)年に廃駅となっている。

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 13時45分、その蕨岱駅跡と思われる場所を通過。ホームの跡や駅前広場と思われるスペースは確認できたが、駅跡の周辺に人家は見当たらなかった。

 黒松内は山間部に拓けた集落で、上り列車がこちらの到着を待っていた。満員の我が列車に、ここから旅行者らしい男性客が1人乗車。次の熱郛では男性が2人乗車したが、1人は若い鉄道ファン、もう1人は登山者らしい年輩者だった。

ログハウス風の駅舎が目を引く目名駅

 その次の目名はログハウス風の瀟洒な駅舎が建っているが、乗降客はゼロ。ここまでの途中駅から、地元住民らしい利用客が1人も乗って来ない。休日だからなのかもしれないが、1日4本しかない下り列車のうちの貴重な1本なのに、どの駅も利用状況はこんな感じなのである。そのため私も、長万部からずっと立ちっぱなしが続く。

高原リゾートの玄関・ニセコ駅でも観光客の姿はまばら

 14時23分、蘭越着。長万部から51.1km、1時間ほど走ってきたこの駅で、初めて地元住民らしい中年男性が3人乗ってきた。駅前広場が小ぎれいに整備され、その周りに街が広がっている。この蘭越から小樽方面へは、長万部からの直通列車のほかに蘭越発着の区間列車も存在する。

 蘭越の集落を出て、また無人の原生林や渓流沿いを走り、山道を上っていったところが、高原リゾートの玄関駅・ニセコであった。家族連れの観光客が1組下車。代わりに乗ってくる客はいない。

 私は函館方面から長万部まで特急「北斗9号」に乗ってきたが、実は長万部から小樽へ行く場合、そのまま特急で札幌まで行った方が早く到着できる。したがって、長万部でこの“山線”ディーゼルカーに乗り換えると便利な主要観光地は、このニセコくらいしかない。

 そのニセコで乗降する旅行者がほとんどいないというのは、今日の満員の乗客の大半が、私も含めて、観光地の訪問ではなくこの“山線”に乗り通すこと自体が主目的の鉄道ファンであることの証でもあろう。