本格的な“酷道”の出現……!
3枚目の看板を過ぎると、いよいよ本格的な酷道となり、対向車とすれ違うことができない細い道が続く。こうした道を走るとき、待避スペースを通過する度におよその場所を覚えておく必要がある。対向車が来た場合に、どれぐらいバックすれば待避できるのかを知るためだ。
バックする距離が長いからといって、相手に下がってもらう訳ではない。距離の目安が知りたいだけだ。趣味として訪れている以上、常に対向車が優先、自分がバックする側だと思っている。
田園地帯から山間部に入ると、道幅はさらに狭くなった。酷道でのドライブは、多くの情報を次々と処理しないといけないため、実は結構忙しい。ずっと遠くを見渡し、対向車の接近をかなり遠くから察知しておかないと、すれ違うのが大変になる。パンクを防ぐため、路面の落石も極力踏みたくない。獣が飛び出してくることもあるし、倒れかかっている木がないか、上方の確認も必要だ。
慎重に運転していると、県道308号との分岐に差しかかった。右に別れる県道308号は、国道490号よりも道幅が広いように見える。なんだか納得がいかないが、酷道ではよくあることだ。
Uターンを促す看板には13キロの区間と書かれていたが、10キロも走らないうちに改良区間に到達し、酷道は終了した。看板設置後に改良工事が行われ、酷道区間が短くなったのだろう。
時代の変化に取り残され、いずれ消えゆく酷道
この酷道490号は、高規格道路“小郡萩道路”として整備される計画があり、既に工事が始まっている。Uターンを促す2枚目の看板の近くでは、トンネルの掘削工事が進行していた。一連の工事が完成すれば国道490号の酷道区間は解消される。つまり、酷道490号は消滅する。
国道は全国に459路線あり、これ以上増える見込みはない。現在ある酷道は、道路整備が進むと普通の国道になってしまうので、酷道はいずれ全て消滅する運命にある。
国道制度が始まった明治時代には、全ての国道が酷道だったと言っても過言ではないだろう。モータリゼーションを経て自動車中心の社会へと進化してゆくなか、時代の流れに乗り遅れてしまったのが、酷道であるともいえる。
時代の変化に取り残され、いずれ消えゆく酷道。その運命に、儚さや魅力を感じるのは私だけだろうか。酷道を楽しむことができるのは、今だけかもしれない。