国道は、日本で最上級の道路だ。整備が行き届き、交通量も多い道路をイメージする人がほとんどだろう。しかし、そんなイメージとは裏腹に、道幅は狭く舗装も剥がれ、路面に無数の落石が転がっているという酷い状態の国道、すなわち“酷道”も存在している。私はそんな酷道に魅力を感じて、全国を巡っている。
日本全国には酷道といえる道が50以上はあるが、今回は特に珍しい「国道152号」をご紹介したい。
「日本のトンネル技術が敗退」した超難所
長野県上田市を起点とし、終点の静岡県浜松市までを結ぶ。実延長261キロメートルの道で、ほぼ全線が山間部を通過している。
縄文時代から内陸である信州に塩や海産物を運び込んでいた“塩の道”であり、江戸時代からは火防の神様である秋葉神社を参詣するための“秋葉街道”として知られるようになったルートを踏襲している。
そんな歴史の深い道であるにも関わらず、国道152号は長野県茅野市から終点の静岡県浜松市にかけての長い区間で、断続的に酷道の状態が続いている。さらに、途中に2箇所の未開通区間をも抱えている。そのうちの1箇所、青崩峠区間は1970年に国道指定を受けて以来、これまで何度も調査が行われてきた。実際にトンネルも一部掘られたが、地盤がもろく、あまりにも崩壊が激しいため、この区間に道路を建設することは技術的に不可能とされてきた。
私が探索時に愛用している道路地図『マックスマップル中部東海・北陸道路地図』(昭文社、2006年発行)には、青崩峠の箇所に「あまりの崩落の激しさに日本のトンネル技術が敗退」と書かれているほどだ。
そんな酷道152号を走ってみた
それでは早速、酷道152号を実際に走ってみよう。塩の道になぞらえて、海側の静岡県浜松市からスタートする。市街地から郊外に向けてしばらく走っていると、天竜川が近づいてくる。船明ダム付近からは完全に山間部へ。
さらに北上し、佐久間ダムが近づくと、152号は天竜川の支流である水窪川に沿い、並行する天竜川よりやや東側を北進するようになる。ここまで、酷道要素はわずかしかない。
だが、出発から2時間が経過する頃、1つ目の未開通区間に差しかかる。日本のトンネル技術が敗退した青崩峠だ。