3月は別れの季節だ。卒業を迎える人や、年度末で姿を消す施設も多い。名阪上野ドライブイン(三重県伊賀市)も、その一つだ。

 ドライブインは、モータリゼーションとともに誕生した。主要道路沿いや、峠など難所の前後に設けられることが多く、大型トラックが休憩できるように巨大な駐車場を備え、食堂やお土産物売り場を併設している。うどんやハンバーガーの自販機、ゲームセンター、シャワーや仮眠所を設けているドライブインもある。高速道路のパーキングエリアやサービスエリアと同じような役割を担っている。

2022年3月31日に「最後の日」を迎えた名阪上野ドライブイン

 下道の「道の駅」と似ているように感じるかもしれないが、道の駅は地方自治体と道路管理者が設置している。道の駅は1991年に始まったばかりの制度でもあり、官主導の道の駅と民営のドライブインとは、似て非なる存在だ。

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 利用しやすいよう綺麗に管理されている道の駅やサービスエリアに対し、ドライブインはどこか煤けた雰囲気があり、昭和感が漂っている。人によって判断は分かれると思うが、私はそんなドライブインも大好きだ。

55年間の歴史に終止符

 ドライブインは大型トラックの運ちゃんの憩いの場として、また、観光バスの休憩所として重宝されてきたが、近年になって急速に数を減らしている。昔に比べると高速道路が発達し、サービスエリアに取って代わられた部分もあるが、大型駐車場を備えたコンビニの存在も大きい。ドライブインが出来た当時は日本にコンビニなどなく、大型車が駐車できる休憩スペースはとても貴重だった。

 2022年1月、名阪上野ドライブインが3月末をもって閉店すると発表された。名阪上野ドライブインは、名古屋と大阪を結ぶ名阪ルートである国道25号、通称名阪国道沿いに位置するドライブインだ。西日本では最大規模であり、全国で見ても有数の規模を誇るドライブインだった。

名阪上野は西日本で最大規模のドライブインだった

 私はこれまで20年間にわたって何度も利用してきた。巨大な施設だけに、いつまでもあり続けると信じて疑わなかった。それが無くなるというのは、単に1つのドライブインが終わるというだけではなく、日本のドライブインという文化の終焉を象徴する出来事のように感じた。

 そして迎えた2022年3月31日。名阪上野ドライブインが55年間の歴史に終止符を打つ当日、私は開店から閉店まで最後の1日を見届けることにした。