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「寂しいですね…」開業から55年、全国の運転手を支え続けた“名阪上野ドライブイン”がひっそりと迎えた最後の日

2022/04/10

genre : ニュース, 社会,

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小雨が降るなか、最終日が始まった

 8時30分、小雨が降るなか、名阪上野ドライブインの売店が開いた。商品は既に残り少なく、空っぽの棚も幾つかあった。最終日だからといって人が押し寄せるわけでもなく、静かに最後の1日が始まった。

 ドライブインの周囲を歩いていると、駐車場の入り口にある小屋の前に、スーツ姿の男性が立っていた。小屋には係員が常駐している。スーツの男性に声をかけると、なんとこのドライブインを運営している三交興業の豊永久社長だった。

8時30分に開店した売店。商品は既に残り少なくなっていた
駐車場の入り口にある小屋
小屋の中も見せていただいた

 小屋のことを聞くと、ここで観光バスをはじめとする車両の出入りを監視しているのだという。観光バスが入ってくると、誘導したり売店の人とも連携する。小屋の中も見せていただいた。

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閉店までの経緯を尋ねると……

 そして、ドライブインのことも聞いてみた。もともとは観光バスのお客さんが多かったが、ここ10年で目に見えて減ったという。これは、名阪国道と並行する新名神高速道路が2008年に開通したのが大きな原因だろう。観光バスが根本的に名阪国道を通らなくなってしまったのだ。

 また、それ以前の2001年には同じ名阪国道の20キロほど大阪寄りに、道の駅針テラスが開業した。針テラスは500台以上が駐車できる西日本最大規模の道の駅で、一般車両の多くはこちらを利用するようになっていた。

スーツを着ているのが、このドライブインを運営している三交興業の豊永久社長
閉店を知らせる貼り紙

 そして施設も老朽化し、青息吐息のところを、コロナ禍が襲った。コロナによる影響も、決して少なくなかったという。「寂しいですね」と、豊永社長は目を細めた。

 10時30分、レストランの営業がはじまった。つなぎ服姿の男性が一人、開店前から並んでいた。よほど思い入れがあるのだろうか。