2019年2月、表示回数100万回を超えるツイートを発信した劇作家の鴻上尚史さん。そんな彼に送らてきたメンションの中には、「私には子供がいませんが、つらいです」とか「虐待から目を背けないで下さい!」など、鴻上氏に対する批判めいたものも。この現象について氏が思ったこととは?
鴻上氏が週刊SPA!で連載した「ドン・キホーテのピアス」から、選りすぐりのエッセーを集めた『人間ってなんだ』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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ツイッターと想像力
「僕は作家なので想像力はそれなりにあると思っていたのだが、子供を持って初めて『虐待によって殺された子供のニュース』がつらすぎて、なるべくなら見たり聞いたりしたくないという気持ちになる。子供を持つまでこんな気持ちになるなんて夢にも思わなかった。自分の想像力なんて大したことないと思った」というツイートをしたらバズりました。
「インプレッション」というユーザーに表示された回数が、100万を超しました。すると、いろんなツイートが飛んできました。
「私には子供がいませんが、つらいです」とか「虐待から目を背けないで下さい!」とか「子供を持たないと分からないと言いたいのですか!」とか「子供を持ちたくても持てない人を傷つけていることが分からないのか」とか、まあ、香ばしいのがたくさんきました。
「ブレイクすることは、バカに見つかること」と言ったのは、有吉弘行さんだったでしょうか。
100万を超すと、本当に予想外のツイートが飛んできます。これもまた、自分の想像力なんてちっぽけなものなんだなあと思わされます。
「子供を持てない人を傷つける、こんなツイートはしないように気をつけよう」というのもありました。
僕が書いたツイートは、想像力について語ったものです(とまあ、あらためて書くのもナンなんですが)。
僕自身、子供を持つことでこんなに胸潰れるような気持ちになるとは、夢にも思いませんでした。
もちろん、子供を持つ前から、虐待のニュースはとても悲しく感じました。けれど、子供を持つと、その感覚が想像のはるか上だったのです。