「だって、犬は賢いでしょ!」――海外の犬食文化に明らかな嫌悪感を示した女性。大騒ぎする彼女を黙らせた鴻上尚史氏の言葉とは?

 鴻上氏が週刊SPA!で連載した「ドン・キホーテのピアス」から、選りすぐりのエッセーを集めた『人間ってなんだ』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

犬食文化に驚く女性と出会った鴻上尚史氏のエッセーをお届け。 ©文藝春秋

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牛は食えるか、犬は食えないか?

『もの食う人びと』(共同通信社)がベストセラーになっている作家の辺見庸(へんみ・よう)さんにお会いしました。『もの食う人びと』は、世界中のさまざまな食い物を、まさに、「食う」という視点のみからルポした内容なのです。

 この本があんまり面白かったので、いろんな質問をさせていただきました。

 今までで、食べた物の中で、一番、美味しかったのはなんですかという質問に、「ピョンヤンで食べた犬料理ですね」と辺見さんは答えられました。

 と、横にいた女性が、「ぎゃあー! いぬうううぅぅ!?」

 と、絶妙のタイミングで、絶叫しました。

 そういう反応に辺見さんは慣れているらしく、「ええ、犬料理です。サイゴンで食った犬料理は、だめでしたね。犬鍋なんですけど、手とか足とか毛がついたまま、そのままの形で、入ってるんですよ。でも、ピョンヤンの犬料理は、丁寧に身をほぐしていて、絶品でした」と、穏やかに答えられました。