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 僕は、鯨を食って何が悪い、それが日本の文化であると、ずっと思っているのですが、欧米の論法で、だって、牛や豚は食肉用に飼われているのですからというのがあります。だったら、鯨も食肉用に飼えばいいんだなということになるわけで、日本人の技術をなめるんじゃねえ、それでいいのなら日本人は鯨の養殖技術を開発するぞと思っています。

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 ま、確かに、僕だって、犬を食うと聞くと、うっとなりますが、しかし、それが何故なんだろうと考えるのが知性というやつで、こういうすべてが見えにくい時代になればなるほど、感情判断と知性判断は分けたいと思うわけです。

『愛について、東京』という柳町光男(やなぎまち・みつお)監督の映画では、食肉牛がまさに殺されるシーンが繰り返し出てきますが(その瞬間、何故か牛の目が涙で潤むのです)、このシーンを見ると、犬はかわいそうで牛はかわいそうじゃないというのは、まさに、気分でしかないと分かります。

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欧米の倫理観を刷り込まれていないか?

 で、考えれば考えるほど、犬料理をうっと思うのは、欧米の倫理観を刷り込まれた結果なんだという結論に達するのです。

 ソウルオリンピックの時に、韓国政府が犬料理店を大通りから移転させ、隠しまくったのも、これまた欧米の倫理観の反映となるわけです。

 何を言っているんだ、勝てば官軍、負ければ賊軍、あなたがたは、文化的にイギリスやアメリカに負けているんだから、アメリカ、イギリスがこれは野蛮人のやることと決めることに反対する力はないの、牛を食うのは紳士で犬や鯨を食うのは未開人なの、アンダスタン?と言われれば、これはもう分かりやすくていいんですけどね。

 じつは、辺見さんと話して、一番、面白かったのは、人肉食のことでした。

 人肉食の問題は、いつも、倫理とか飢餓とか極限状態とか愛とかのセットで語られます。

 そうではなくて、美味しいかまずいかという「食う」視点で語ることが、なぜタブーなのかを解明する手がかりになるかもしれないということです。世界には、美味しいから人間を食ったとしか考えられない事例がたくさんあるのです。

(1994年11月)

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