理由4:対戦ではない部分もしっかり作り込む
「スプラトゥーン」シリーズは対戦アクションシューティングである。4対4で各プレイヤーがインクを塗り合って戦い、勝敗を決めるわけだが、『スプラトゥーン3』ではその対戦以外の要素も非常に充実している。
対戦の練習にもなり物語も魅力的なひとり用モード「ヒーローモード」、仲間と協力してシャケを狩るアルバイト「サーモンラン」、バンカラ街で流行しているカードゲーム「ナワバトラー」、そしてロッカーに雑貨を飾ったりするカスタマイズ要素も存在する。
実は、対戦ゲームで対戦以外の要素を充実させるのはかなり重要である。たとえば2023年にカプコンから発売が予定されている『ストリートファイター6』もシリーズ初の充実したひとり用ストーリーモードを用意しているし、バトルロワイヤル系シューターの『Apex Legends』もキャラクターの物語・設定に注力している。
勝ち負けを決める行為はストレスが溜まるため、忌避する人も少なくない。ゆえに勝負ではないそのほかの要素を充実させれば、より多くのプレイヤーを取り込める可能性が増えるわけだ。
もっとも、対戦以外の要素を充実させた結果として対戦モードがだらしなくなってしまっては困るのだが、『スプラトゥーン3』は過去作で積み上げたものをうまく活用しているので問題ない。
「スプラトゥーン」シリーズは特に日本で圧倒的な人気
Nintendo Switchが売れに売れている“環境”、日本人のシューター慣れという“理解”、キャラクター・世界設定という“親しみやすさ”、そして対戦以外のモードを充実させる“幅の広さ”の4つが揃ったからこそ、『スプラトゥーン3』は爆発的に売れているのだろう。
ただし、ひとつだけ注意点がある。今回はあくまで「日本国内」の売上がすごいのであって、世界規模の話ではない。「スプラトゥーン」シリーズは、シューターにあまり馴染みがなかった日本で出したからこそ強く響いたわけで、もともとシューターに慣れている国ではそこそこの人気に落ち着いているからだ。ほかのタイトルと比較すると、日本・海外での売上比率が日本に偏っているのがわかる。
たとえば『あつまれ どうぶつの森』は日本では約1000万本、海外では約3000万本売れており、比率は1:3になる。一方、『スプラトゥーン2』は日本で約500万本、海外で約830万本と、比率は1:1.66だ。特に日本での人気が高いシリーズなのは間違いないだろう。
ゆえに『スプラトゥーン3』が『マリオカート8 デラックス』や『あつまれ どうぶつの森』の世界累計販売本数を抜くかは微妙なのだが、しかし『あつまれ どうぶつの森』が打ち立てた「日本国内で最も売れたゲーム」の記録を抜く可能性は十分にある。2022年の日本では、イカやタコがインクを塗りまくるブームが来るのかもしれない。