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突然の解雇宣告を受けた筧容疑者は、はらわたが煮えくり返ったのだろう。その日のうちにホームセンターへ行き、包丁2本と木製バット1本を購入した。
女性の腹には包丁が刺さったままだった
「女性の腹には包丁が刺さったままやった。一部の傷は腹から背中に貫通するほど深く、ほぼ即死やったと思う。容疑者は包丁を2本持っとって、男性に向けたんはもう1本の方やな」(冒頭の捜査関係者)
こうして2人に凶刃は向けられた。だが、そこにはなんともやりきれない「勘違い」があった。実は、殺害された女性は最後まで筧容疑者をかばっていたのだ。事件現場を所管する神戸北警察署の幹部は、
「暴力沙汰をクビの理由にしたいヤマト側は、この女性に警察へ行き被害届を出すよう促した。実際に女性はその日の昼に神戸北警察署へ来て相談もしている」
と明かす。だが、女性は被害届を出さずに帰ったという。
「『手が当たったのも自分に向けられたわけではない。自分は筧さんとの関係も悪くないから』と。上司には届け出るよう指示されたが気乗りしない様子だった。明らかにかばっていた」
筧容疑者にしてみれば、警察署に駆け込んだことで、女性も一緒になって自分をクビにしようとしたと思えたのだろうか。真っ先に滅多刺しにしたのが、その女性だったのだ。
事件当日、女性の遺体が安置された警察署には遺族の姿もあった。
「なんでこんなことに……」
嗚咽混じりにそうこぼす姿を見て、詰めかけていた記者たちは誰も声をかけられなかった。