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ドラゴンズを愛した男…去りゆく平田良介に捧げる“心のセレモニー案”

文春野球コラム クライマックスシリーズ2022

2022/10/09

体重問題、ヤジに激怒、故障と難病……

 体重問題も忘れてはいけない。年明け、平田がどれだけ太っているかを確認するのがファンの恒例行事だった。荒木雅博選手からは熊本自主トレの参加条件として80キロ台への減量を命じられており、13年には中部国際空港に体重計が用意されてボクサー並みの公開計量が行われた(結果は失格。再計量でなんとかパス)。「肉を食べないと力が出ない」「太ろうと思ったらいくらでも」と公言していたが、意識改革を行って18年オフには海外自主トレで栄養士に食事についてレクチャーを受けた(内容は「ラーメンとおにぎりのセットを食べるのはNG」)。今年1月にはインスタで「こんなにも体重を気にされる人は俺かグラドルかアイドルぐらいやろ」と自分で言っていた。平田の食事シーンと計量シーンもぜひ映像に入れておきたい。

 ファンに親しまれた平田のあだ名も入れておこう。印象的なのは小倉優子さんに呼ばれた「平田りん」と佐伯貴弘選手に言われた「肉団子」。あとは「球王」とか「国王」とか。正直、「GACHAGORI」はピンと来ない。

 ずっと膝などの故障に悩まされていたが、病魔にも襲われた。2021年に異型狭心症であることを公表。3分間のジョギングもできなくなった。しかし、そこから復帰して今年はホームランを打っている。すごいぞ、平田。

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 熱い男でもあった。インタビューでは相手を透かすようなところがあって、あまり熱いことを言わなかったが、仲間思いだった。16年にはナゴヤドームでビシエドに侮辱的なヤジを飛ばしたドラゴンズファンに猛然と食ってかかった。あらためて映像を見返すと、こちらの記憶の3倍ぐらい怒っている。本当にスタンドまで登っていきそうな勢いだった。この名場面は入れておこう。

 年齢の近い大島洋平選手との関係も特筆すべきものだ。若手時代は熊本自主トレで一緒に汗を流した。ナゴヤドームの「平田デー」で平田が4三振して大島がお立ち台に上がり、大島が気遣ったこともあった。今年4月、阪神戦で大島が死球を受けたときは、平田がベンチから飛び出していった。大島の隣にはいつも平田がいた。この10年、ドラゴンズの野手陣はいつも二人で引っ張っていた。20年に平田が1000安打を達成したときは、すでに1500安打を達成していた大島が「おせーよ」と声をかけたが、もし平田がドラゴンズで引退して大島が花束を渡すときは「はえーよ」と声をかけたことだろう。二人の映像もたくさん流してほしい。

 平田は何よりもドラゴンズが好きだった。17年の「ドラゴンズ愛」キャンペーンでは率先して声を張り上げた。16年にFA権を獲得したときもドラゴンズ以外は念頭になかったという。退団するときも「ドラゴンズが好き」と繰り返したが上手く伝わらなかった。ピュアで正直な分、損をしているところがあったのかもしれない。

 ここまで書いてきて、セレモニー動画のBGMを選んでいないことに気がついた。過去の登場曲から選ぶとしたら「お願いマッスル」も捨てがたいが、ここはももいろクローバーZの「PUSH」にしよう。「歓声に沸き立つスタジアム 強い者が勝利をつかむ」という歌詞がいい。歌の締めはこうだ。「これからも 変わらぬ声援 頼みます」。

 これはあくまで一例だ。ファンそれぞれが覚えている名場面や珍場面を足して“心のセレモニー動画”を作ってみてほしい。独自でグッズを作ってみてもいいかもしれない。

 平田良介さん、今までありがとう。弱いドラゴンズを支えてくれてありがとう。希望を持たせてくれてありがとう。ドラゴンズを好きでいてくれてありがとう。心のセレモニー動画を流しちゃったけど、まだ引退は早いよ。これからも頑張ってください。

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