文春オンライン

2022/10/23

「気持ちの面で三上さんに救われた」

 自他ともに認める“マイペース”。

「効率的に考えるのは癖ですよね。とくに野球に関しては」

 三上は頷きながら言う。そして、すかさず三嶋が突っ込むのだ。

「それができるから凄いんですよ。大学時代からずっとスよ。三上さんから『打たれたよ、最悪だよ』なんて言葉を聞いたことないですからね。僕は効率というのがよくわからない(笑)」

 それを聞いた山﨑も言う。

「ホント、三上さんは引きずらない。僕は一喜一憂するタイプで、打たれたら落ち込むこともあったけど、三上さんは『アンラッキーだったな。また明日もあるんだから』と、すぐ切り替えていて、ビックリするほどあっさりしているんです。143試合もあるんだから当然ですよね。だから気持ちの面で三上さんに救われたし、勉強やヒントになったことがたくさんあるんですよ」

 クールでスマートな三上は、投手陣の精神的支柱だった。

「困ったら『三上たのむわ』と言ってもらえる立場でいい」

 入団して5年目までは毎年60試合前後を投げ、ここまで積み重ねたホールド数は114。これは球団の日本人最多記録である。しかし2019年5月に右肘のクリーニング手術をすると、復帰は果たしたもののモップアップの役割にまわることが多くなり、今季はわずか19試合の登板に終わってしまった。

 ただ、三上ほど黙して淡々と仕事をこなす“縁の下の力持ち”はいなかった。ビハインドでの登板はもちろん、ロングリリーフもいとわず買って出た。そんな三上を見ていて、思い出すのは2年ほど前に聞いた次の言葉だ。

「プロ野球選手である以上、一軍で活躍したい。ただ、その役割はキャリアとともに変わっていくものだと思うんです。僕はもう第一線というか、求められればバリバリの勝ちパターンや抑えもやりますけれど、そこは若く勢いのあるピッチャーがやればいい。僕は都合のいいところにポンとハメてもらえればいいなって思っているんですよ。これまでいろいろな経験をさせてもらいましたし、抑えでもセットアッパーでもビハンドでもロングでもワンポイントでも何でもできますからね。ホント困ったら『三上たのむわ』と言ってもらえる立場でいいので、一軍のブルペンを支えたい。とにかくチームの力になりたいなって思うんです」

 三上の語気に珍しく熱がこもる。

「入団してすぐクローザーをやらせてもらっていますし、そういう経験を若い子に伝えて、その若い子が僕の歳になったら、また後輩に伝える。いい伝統を作れたらなって思うんです」

 若きリリーバーである伊勢大夢や入江大生を見てわかるように、先輩から後輩へのブルペン文化の継承は確実にできていると言っていいだろう。三上が礎を作った最強のブルペンは、来季もきっと互いをフォローしあい、フル回転してくれるはずだ。

引退について「できることならば…」

 さて気になる三上の去就であるが、現在のところは正直わからない。三上ほどの人物であれば球団から指導者や職員の誘いがあってもおかしくはないが、そのアナウンスもない。ファーム施設で練習をしている姿が確認されているので、おそらくは現役続行だろう。まだ33歳、老け込む歳ではない。

 夏場に会ったとき「コンディションはいいですよ」と言っており、投げることへの不安はまったくなさそうだ。以前、三上は引退について次のように語っている。

「僕としてはケガで引退はしたくないんです。それで終わったら悔いが残る。できることならば、しっかり投げて、まっとうして終われたら終わりたいんですよ」

 どこで投げつづけるかはわからないが、見識が広い三上がどんな選択をするのかは興味深い。きっと国内外問わず、驚くようなチョイスをしてくれるのではないだろうか。とにかく悔いなく投げ切って欲しい。

 その貢献度は計り知れず、どんなピンチであっても臆せず堂々と投げ込む稀代のブルペンリーダーの姿を決して忘れない。そしていつか「三上たのむわ」と言われて、何らかの形でベイスターズに戻ってくる日を楽しみに待ちたい。

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