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「村上宗隆と比べて物足りない」の声も…巨人・岡本和真が批判を越えて“栄光”をつかむ日

文春野球コラム ペナントレース2022

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デビュー作を超えるアーティストはほとんどいない

 岡本選手の尊さは、試合に出続けてくれるところにあります。今季はコロナ感染もあって3試合の欠場はありましたが、多少のケガなら影響を感じさせないタフさがあります。その結果、2018年から4年連続で30本塁打を超え、今季も残り7試合で1本までに迫っています。5年連続30本塁打を達成するとなると、長い球史でも数えられるほどしか達成されていない大偉業になります。

 多くのファンにとって、岡本選手の成績で印象深いのは1軍に定着した2018年ではないでしょうか。打率.309、33本塁打、100打点。史上最年少で「3割30本100打点」をクリアした、岡本選手にとっては「デビュー作」であり、「代表作」といっていい成績でした。

 音楽の世界では、実は「デビュー曲が最高売り上げ」というアーティストは多いのです。デビュー曲でセールスのピークがきて、もう1回ヤマを持ってこられるアーティストはなかなかいません。最初のヒット作で人々に大きなインパクトを与えると、別の曲で印象を残すのが大変なのです。

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 純烈もデビュー曲ではありませんが、初めて紅白歌合戦に出させていただいた時の『プロポーズ』という曲が世間に一番知られているのではないかと思います。でも、今は『プロポーズ』以上に知ってもらう曲を生み出そうと、日々試行錯誤しています。

 岡本選手はデビュー作で大ヒットを飛ばし、その後も2年連続二冠王(本塁打、打点)というヒットを飛ばしています。歌い手の世界で言えば、10~20年連続紅白出場くらいの離れ業をやってのけているのです。

 それでも、人間はありがたみを忘れてしまう生き物なのでしょうか。岡本選手に対して、もっと上の成績を求めてしまう風潮を感じずにいられません。岡本選手本人もまた、さらなる高みを目指して奮闘しているに違いありません。

岡本の『栄光の架橋』を見たい

 かつて巨人に在籍した清原和博さんなど、鮮烈すぎる「デビュー曲」に苦しんだ選手だったのでしょう。PL学園高校時代に甲子園で大活躍し、高卒プロ1年目に3割、30本をクリアして新人王に。そんな前代未聞の活躍をした後は、「無冠の帝王」と言われ続けました。でも、そんな清原さんも通算本塁打数は歴代5位(525本)なのです。デビュー作の後も、堅実にヒット作を飛ばし続けてきた証拠です。

 岡本選手も十分、堅実にヒット作を重ね続けています。そんな主砲がいることを、巨人ファンはもっと誇らしく感じてもいいのかもしれません。

 そして、岡本選手はまだ26歳。これからも堅実に数字を重ねていくかもしれないし、村上選手のような覚醒が起きるかもしれません。

 フォークデュオのゆずさんにたとえれば、岡本選手はすでに『夏色』を世に出しています。苦しい時期を乗り越えて、これから岡本選手の『栄光の架橋』をぶち上げてほしい……。ファンとして今の岡本選手で十分満足していますが、そんな願いも密かに抱いています。

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