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「あのときいなくなったのは、コイツだ」いつも教室にいるボロボロの服装の生徒…塾講師が気づいた“ゾッとする事実”とは

『異職怪談~特殊職業人が遭遇した26の怪異~』より#2

note

数えるとたしかに25人…誰なのか?

「あれ? と思いました。だって、名簿の名前は全員知っているのに、目の前には知らない子がいる」

 数えるとたしかに25人。

 では、誰なのか?

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 もう一度名簿をなぞっていくが、そのときは理解できている。たしかに、この子たちだ。

 だが、25人の中にひとりだけ知らない人物がいる。

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「混乱したんですけどね。でも、それで休講にしちゃクレームがくる。だから、そのときはできるだけ気にしないようにして授業を進めました」

 要は、問題を解かせるときは、名前を呼ばずに『じゃあ、キミ』と指せばいいのだ。

 Sさんは一応上司に報告をした。だが、まともに取り合ってもらえなかったそうだ。

 また、別の日。

「当時、銀行振り込みではありませんでした、授業料。だから、ひとりひとり親御さんから封筒を預かってきていて、こっちで領収書を切るんです」

 たしかに25人分のお金を保管したはずだった。

 授業がすべて終わって、生徒が帰っていく。

 全員を見送ってから、その日の集計をするのだが、おかしい。

 たしかに、受け取った封筒は25封。手元にあるのが、それだ。

 しかし、金額が24人分でひとり足りない。

 領収書の控えを確認すると、25人分。

 順番に名前を確認していくが、全員名簿と照らし合わせて確認が取れている。

 しかし、ひとり分足りない。

 記憶では、すべて受け取ったはずなのに。