この元監督は、自らも対戦したオリックス時代晩年のイチローを、来季以降の村上に重ね合わせる。
「イチローは活躍が当たり前になっていた。周囲が求めるものにこれ以上応えられないという葛藤を抱えていた。試合では相手投手が勝負を避けたり、死球も辞さない荒っぽい内角攻めを繰り返したりしていた。真っ向勝負がしたい気持ちもメジャー挑戦の動機づけになっていたそうだ。村上も同じような道を歩むことになるかもしれない」
別格ゆえに孤高となることを危惧する
「来年は3月にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)がある。村上らメジャーが獲得を狙っている選手の品評会でもあり、特にメジャー球場でプレーする米国ラウンドは格好のアピールの場。村上も来季は開幕前から刺激には事欠かないだろう。ただ、こうした新しいチャレンジが毎年あるわけではない。いずれイチローのようなマンネリ化に苦しみ、選手としての成長が停滞することもあり得る」(同前)
25歳未満での渡米は、確かに賢明とは言えない。ヤクルトは今季年俸2億2000万円からの4億円以上への大幅アップを前提に、来季から複数年契約を結ぶ用意があるという。日本で現状の力を少なくとも維持し、満を持して26年からMLBでプレーするプランがセオリーには違いない。
大谷は将来の巨額契約にも、MLBへの思いがぶれることはなかった。
「今考えれば、23歳での渡米は実は正解だった。日本の投手や打者相手ではレベルアップに限界があった。より若く伸びしろも多いうちにメジャーに行ったからこそ、二刀流をより高いレベルで完成させることができた。その結果(FAになる)来年オフの契約は200億円どころか、400億円や500億円という規模になりそうだ。人間万事塞翁が馬ではないが、村上も大谷から学ぶことはあるのではないか」(前出の代理人)
大谷がメジャー移籍を決断したのは奇しくも今の村上と同じ5年目のオフだった。